トレンドマイクロは2018年6月25日、2017年(1~12月)の国内における標的型サイバー攻撃を分析したレポート『国内標的型サイバー攻撃分析レポート 2018年版:「正規」を隠れ蓑にする攻撃者』を公開した。正規ツールやサービスを悪用した攻撃の隠ぺいが標的型サイバー攻撃の94.0%で見られるなど、2017年は「正規」を隠れ蓑にするサイバー犯罪者の活動が特に顕著だったとしている。
標的型サイバー攻撃では、遠隔操作ツール(Remote Access Tool:RAT)や遠隔操作サーバー(C&Cサーバー)を使って、標的組織内の端末制御から情報窃取に至るまで様々な内部活動が行われる。2017年にトレンドマイクロが確認した標的型サイバー攻撃の大半において、ソフトウェアからインターネットサービスに至るまで様々な正規ツールやサービスが内部活動で悪用されていた。
標的組織内の端末を遠隔で制御し続けるうえで使われるC&Cサーバーは、同社が確認したもののうち83.3%がクラウドサービスやホスティングサービスなどの正規サービス上に設置されていることを確認した。国内の正規Webサイトが改ざんされたうえでC&Cサーバーとして悪用されているケースが確認された2015年と比較しても、2017年はその傾向が大きく異なっていることが分かる。
標的組織内での内部活動においては、不正コードを正規プロセスの一部として実行することで遠隔操作ツールの存在と活動を隠ぺいする「DLLインジェクション」や「DLLプリロード」などの手法が使われていた。また、標的組織のネットワーク内部で使用されている認証情報を窃取するうえで、オープンソースツールやフリーツールなどが利用されていた。これらの正規ツールやサービスの利用は、セキュリティ製品・サービスによる検出を回避し、システム管理者による攻撃の特定を難しくする意図が伺えるという。
トレンドマイクロが2017年1年間に行った法人顧客のネットワーク監視活動の中では、監視対象法人組織全体の71.0%で、標的型サイバー攻撃の兆候である内部活動の疑いを確認した。特に、標的型サイバー攻撃が実際に行われていることを示唆する、遠隔操作ツールによる活動は全体の26.0%で確認されており、およそ4法人組織に1組織で実際に標的型サイバー攻撃によるネットワーク内部への侵入が発生していたことが分かるという。
同社の監視サービスが生成するアラートは、1組織当たり月平均35万6514件に上る。この中で、C&Cサーバーとの通信や内部活動といった標的型サイバー攻撃の可能性を示唆するアラートは、1組織あたり月平均778件と、アラート全体のわずか0.2%に過ぎない。このことから、大量のログやアラートのなかから、いかに早期に標的型サイバー攻撃の痕跡を可視化できるかが、被害を防止するために重要になる。