IT市場調査会社のノークリサーチは2019年1月8日、年商500億円未満の中堅・中小企業におけるサーバーおよびクライアントPC環境についての現状分析と今後の展望を発表した。サーバーでは「HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)の普及にともなう選択の変化」が、クライアントPCでは「ハードウェアも含めたサービス化」が焦点になるとしている。これらの見解は、ノークリサーチが2018年に発行した4つの調査レポートをベースに導いたものである。
年商500億円未満の中堅・中小企業におけるサーバー環境について、ノークリサーチは、HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)がオンプレミスのサーバー環境で今後さらに浸透していくことと、HCIによってクラウドを選択する理由が変わることを示した。
同社が2018年に発行した調査レポートでは、HCIが中堅・中小企業で普及が進んでいることが判明している。HCIを「導入済み」、「導入を計画/予定」、「導入を検討」の合計は回答企業全体の31.8%を占める。
また、HCIの用途も汎用化している。調査の回答者は、基幹系や情報系といった主要な業務システムの用途を挙げている。単なる「サーバー仮想化におけるSAN(ストレージエリアネットワーク)の代替手段」ではなく、「サーバー資源の柔軟性や伸縮性をオンプレミス環境でシンプルに実現する手段」になっている。
HCIの普及がクラウドの選択に影響
こうした状況から、今後、HCI製品の価格が下がり、ユーザーの間で運用ノウハウが蓄積されていくことによって、オンプレミス環境のHCIが、サーバーを選定する上での有力な選択肢となることがわかる。ノークリサーチは、オンプレミスとクラウドのどちらを選択するかという意思決定にHCIが影響を与える可能性がある、と見ている。
実際に、サーバー環境としてクラウド(IaaSやホスティング)を選択する理由に変化が生じている。同社は2018年発行の調査レポートから、今後減っていくクラウド選択理由と、今後増えるクラウド選択理由を読み取った(図1)。
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クラウドの選択理由として今後減っていく項目は、「ハードウェアやミドルウェアの調達/設置が必要ない」や「OSやミドルウェアの更新作業を外部に任せられる」などである。一方、今後増える選択理由は、「プログラミングせずにアプリケーションが作成できる」や「オンプレミスより高度なセキュリティを実現できる」などである。
HCIによって柔軟性/伸縮性を備えたサーバー環境をオンプレミスでも実現できるようになると、ハードウェアを持たないことによる柔軟性/伸縮性の確保は、クラウドの最も主要な選択理由ではなくなる。代わりに、PaaS(Platform as a Service)との融合による迅速で手軽なアプリケーション開発や、専門業者に委託することで得られるセキュリティ強化が選択理由として増えていく。
●次ページ:「サービスとしてのWindows(Windows as a Service)」の今後の定着に関する見解
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