IT市場調査会社のノークリサーチは2019年1月10日、年商500億円未満の中堅・中小企業の業務システムに関して今後の見解を発表した。2019年は基幹系、情報系、運用管理系のすべてにおいて大きな変化の節目になるとしている。基幹系は顧客対応の改善や高度なデータ分析の需要が増す。情報系は複数システムを連携させて実行する需要が増す。運用管理系は、パッケージソフトのクラウド化が進む。これらの見解は、同社が2018年に発行した2つの調査レポートをベースに読み取ったものである。
ノークリサーチは毎年、業務システムを10の分野に分類し、それぞれについて導入社数シェアとユーザー企業による評価を行い、加えて、セキュリティ、運用管理、バックアップなどについても調査・分析を行っている。10分野はERP、会計管理、生産管理、販売・仕入・在庫管理、給与・人事・勤怠・就業管理、ワークフロー、グループウェア、CRM、BI・帳票、文書管理・オンラインストレージサービスである。
今回、2018年に発行した調査レポートを基に、2019年の中堅・中小企業(年商500億円未満)における業務システムの活用について見解を発表した。同社は、会計や販売などの「基幹系」、グループウェアやワークフローなどの「情報系」、セキュリティなどの「運用管理系」のいずれにおいても大きな節目の年になると予想している(図1)。
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同社によると、基幹系では、消費税率10%改正などの外部要因への対応に加えて、顧客対応の改善や高度なデータ分析などの需要が増していくという。情報系では、グループウェアの役割が社外との情報共有などへと拡大するほか、ワークフローの役割が複数システムを連携させる用途へと拡大する。運用管理系では、パッケージソフトのクラウド化とアウソソーシングが進むとしている。
基幹系は、顧客対応の改善や高度データ分析などの需要が増す
会計や販売などの基幹系システムでは、2019年10月から施行の消費税率10%改正のような外部要因への対応に加えて、顧客対応の改善や高度なデータ分析などの需要が増していく。
消費税率の改正以外にも、基幹系に影響を与える外部要因は多い。例えば、日本IBMは、銀行や会計ソフトウェアベンダーと協調して「会計データ・オン・クラウドプラットフォーム」を2020年から提供する準備を進めている。同サービスを利用すると金融機関への財務/会計データの提供が容易となるため、融資を求める中小企業や小規模企業による会計データ処理のデジタル化が進む可能性がある(関連記事:中小企業の財務会計データをAPI/クラウドを介して銀行に提供できる基盤、日本IBMが地銀など52社と検討)。
また、日本政策金融公庫は2019年度から、雇用創出や働き方改革に関する融資の際に、従業員の社会保険への加入を条件とすることを決めた。小規模企業における社会保険の加入逃れを減らすことが目的だが、これによって小規模企業における人事労務支援サービスの新規導入が増える可能性も考えられる。
基幹系では、こうした外部要因に基いたIT活用だけでなく、これ以外の施策についても並行して練っておくことが大切である、とノークリサーチは説く。こうした施策の中で有望と考えられるのが、基幹系システムの整備によって顧客対応を改善したり、高度にデータを分析したりすることである。
例えば、CRM(SFAおよびMAを含む)を導入済みの企業に対して「現状の課題」を尋ねた結果の一部を2017年と2018年で比較したところ、Webマーケティングの課題(「Webサイトのアクセス分析やページ最適化ができない」)や、O2O(Online to Offline)の課題(「店舗とオンラインを横断した顧客管理ができない」)が増えている(図2)。
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WebマーケティングやO2Oで十分な成果を挙げようとすれば、売上分析や在庫管理も効率化する必要がある。現在は、「基幹系とCRMの基本的な連携はカバーできているが、WebマーケティングやO2Oの課題解消の取り組むが進むにつれて、再び基幹系システム側にも改善が求められてくる」(ノークリサーチ)状況と考えられる。
●次ページ:情報系、運用管理系、セキュリティの今後の展望
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