[事例ニュース]

中外製薬、AI駆動開発でアジャイルを実践、担当者が「開発速度5倍」を実感

コード生成AI「Gemini Code Assist」を各部門で活用

2025年10月28日(火)日川 佳三、河原 潤(IT Leaders編集部)

中外製薬(本社:東京都中央区)は、臨床開発やアプリケーション開発、データ分析などにおいて生成AI/AIエージェントを活用したAI駆動開発を始めている。コーディングAIエージェント「Gemini Code Assist」を活用し、プロトタイプの作成に要する時間が数週間から数十分に短縮され、開発速度はが5倍に向上したという。グーグル・クラウド・ジャパンが2025年10月22日に発表した。

 中外製薬は、独自技術とサイエンスを強みとする研究開発型の製薬企業である。アンメットメディカルニーズ(Unmet Medical Needs:有効な治療法がない、あるいは現在の治療では不十分な疾患に対する医療的な要望)に応えるべく、デジタル/AI創薬も取り入れながら、革新的な医薬品の創出に取り組んでいる(関連記事中外製薬が挑む「デジタルを駆使したAI創薬」その進捗と成果)。

 同社の各部門では、内製開発を進める過程でいくつかの課題に直面していた。臨床部門の場合、ソフトウェア開発のスキルを有した人材が少なく、新規開発に対する心理的なハードルが高かった。1つのアプリケーションを開発するだけでも相当な工数を要していたという。

 臨床部門で開発を担うバイオメトリクス部臨床システム・インフォマティクスグループの高野達人氏は、「要件をヒアリングし、効果を精査したうえで開発していた。特に外部委託案件では、効果の定量化やマネジメント部門による承認も必要で、気軽に『作ってみよう』とは言えない状況だった」と振り返る。

 デジタルソリューション部アジャイル開発グループの尾形遥介氏も、「一度決めた仕様を変更することは困難だった。エンドユーザー部門からのフィードバックを改善につなげるサイクルを迅速に回すのは難しかった」と当時の状況を明かす。

 これらの課題を解消するため、同社はAI駆動開発に注目し、開発プラットフォーム/ツールを調査。その結果、グーグル・クラウド・ジャパンのコーディングAIエージェント「Gemini Code Assist」(画面1)を導入した。尾形氏は、開発者の意図を正確に汲み取ったコードを生成できる点を、デジタルソリューション部データサイエンスグループの水谷圭佑氏は、BigQueryに問い合わせるSQLを容易に作成できる点を評価している。

画面1:「Gemini Code Assist」の開発画面例(出典:グーグル・クラウド・ジャパン)
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プロトタイプ作成が数週間から数十分に

 Gemini Code Assistの導入により、開発着手までのプロセスが大きく変化した。以前はプロトタイプの作成に数週間かかっていたが、現在は数十分で作成できるようになったという。高野氏は「業務部門からの『こんなアプリはできないか』というフランクな相談に対して、その場ですぐにモックアップを作ってイメージをすり合わせられる」と話す。

 コーディングAIエージェントが、開発の進め方自体に大きな影響を与えている。「以前は要件を固めてから開発していたが、今は『まず作って、見てもらう』というサイクルを高速で回すスタイルに変わった。早い段階でフィードバックをもらい、改善を重ねていく。このアジャイルなアプローチで業務部門主導の開発が可能になった」(高野氏)

●Next:中外製薬の内製開発レベルを引き上げる「エージェントモード」

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