[ユーザー事例]
医師不足対策から創薬加速まで─第一三共と浜松医科大学が挑む医療現場のトランスフォーメーション
2025年10月29日(水)神 幸葉(IT Leaders編集部)
ヘルスケア・ライフサイエンス分野は、厳格な規制や人材不足といった課題に取り組むために、AIやクラウドを駆使した業務変革が加速している。アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が2025年10月7日に開いた説明会に、同分野の顧客である第一三共と浜松医科大学のキーパーソンが登壇。データとAWSのAI/クラウドを連携させるといった、製薬研究や医療の現場での取り組みを紹介した。
ヘルスケア・ライフサイエンス分野は、デジタルやITの活用による革新のポテンシャルが非常に大きい一方で、分野・業界の特性ゆえの根深い課題も抱えている。主なものに、「厳格な規制」や「医師や看護師などの人材不足」「部門のサイロ化によるデータの分断」などがある。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が開いた同分野の説明会に、顧客である第一三共と浜松医科大学のキーパーソンが登壇。データとAWSのAI/クラウドを連携させるといった、製薬研究や医療の現場での取り組みを通じて、目指す医療現場のトランスフォーメーションのさまをそれぞれ語った。
浜松医科大学
生成AIで挑む医療課題解決
静岡県は人口10万人あたりの医師数が全国39位と少なく、国内における「医師少数県」の1つだ。浜松医科大学 医療DX推進担当 病院長特別補佐の五島聡氏(写真1)は、「静岡県の西端に位置する当学は県内唯一の医学部であり、広大な県全域に医療リソースをいかに継続的に提供していくかを課題にしている」と状況を説明した。
写真1:浜松医科大学 医療DX推進担当 病院長特別補佐 五島聡氏さらに、第2次ベビーブーム世代が定年を迎え、少ない生産年齢人口で多くの高齢者を支える「2040年問題」も迫る。
厚生労働省の「医療DX令和ビジョン2040」は、柱の1つとして「電子カルテ情報共有サービス」を掲げている。医療情報交換のための新標準規格「HL7 FHIR」を用いて、医療機関同士が電子的に診療情報をやり取りする仕組みで、将来的には患者が自身の健康や医療、介護に関する情報(パーソナルヘルスレコード)を閲覧できるようになるなど、国民全体の利益につながることが期待されている(図1)。 このモデル事業は全国10カ所で行われており、静岡県では浜松医科大学が中心となり、県や自治体と連携している。
図1:電子カルテ情報共有サービスの全体像(出典:浜松医科大学)拡大画像表示
静岡県下ではさまざまな医療機関が参加しており、現時点で県のおよそ半分の面積をカバーしており、今後、段階的に県全体へ展開していく計画だ。
「このような活動を通じて、大学病院のような大規模病院が抱える医療現場の課題は『時間の捻出』『マンパワーの捻出』『デジタル化』に集約されていることがわかってきた」と五島氏。これらの課題解決を目指し、2024年11月の浜松医科大学とAWSジャパンの包括連携協定締結に至ったという。
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