米IBMと子会社のThe Weather Companyは、これまでよりも予測精度が高い新気象予報システムを開発した。気象予報の解像度を12km四方から3km四方へと細密化した。2019年後半に世界中で利用可能になる予定である。2019年1月8日(現地時間)の発表内容を、日本IBMが同年1月10日に伝えた。
米IBMとThe Weather Companyの「GRAF(グローバル高解像度大気予報システム)」は、商用の気象予報システムである。特徴の1つは、毎時データを更新することである。雷雨のような局地的な事象を、世界規模で予測できる。
GRAFの活用例を示している。航空会社は、乱気流による混乱を最小化でき、保険会社は、豪雨災害発生後の対応に備えられる。公益企業は、停電に備えて保守要員を適切に配置できる。農業従事者は、気象の急激な変化に先んじて備えられる。
今回のシステム刷新では、既存モデルと比較して、予報の解像度を12キロメートル四方から3km四方へと面積を16分の1に細密化した。これにより、これまでよりも精度の高い予報が可能になった(写真1)。
![写真1:気象予報の解像度を12キロメートル四方から3キロメートル四方へと細密化し、より精度の高い気象予報を可能にした(出典:日本IBM)](/mwimgs/6/c/600/img_6ca07511aa63e76b859672e336a852961232907.jpg)
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現状の気象予報システムは一般に、米国、日本、西ヨーロッパをはじめとする限られた地域以外の国々では、さまざまな気象現象を捉えるには広すぎる12~15km四方での気象予測モデルを採用している。このため、正確な予報が行えていない。また、データは頻繁には更新されておらず、多くは6~12時間ごとの更新となっている。
一方、GRAFでは3km四方の高解像度で毎時更新する。これにより、その日の信頼できる予報を提供できる。
新システムは、航空機からのセンサーデータの読み取りなど、これまで利用していなかったデータを加える。これにより、特殊な気象機器を持たない世界の多くの地域の課題を解決する。また、人々が情報共有に合意すれば、スマートフォンの中にある気圧センサーの測定値を利用できるようになる。さらに、アマチュア気象愛好家が運営している気象観測機器からのデータ供給も受ける。
米IBMでは、「気象は人々の日々の行動に影響を与え、業績に対する最も重要な外的要因」と指摘する。米IBMの新気象システムによって、世界中のすべての組織が、より精細で正確な気象予報にアクセスできるようになるとアピールする。