[イベントレポート]
「信頼こそ差別化要因」─ロメッティCEOが語るIBMのデジタル戦略第2章
2019年3月4日(月)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)
「トラスト(信頼)はすべてのテクノロジーにとって最大の前提条件であり、IBMにとっての最大の差別化要因。トラストこそがデジタルとAIによる第2章を切り拓く」──2019年2月12日(米国現地時間)、サンフランシスコで開催された米IBMの年次コンファレンス「IBM Think 2019」の開幕基調講演に登壇した同社会長兼CEOのジニ・ロメッティ(Ginni Rometty)の言だ。同氏のキーノートから、IBMがデジタル時代に目指す第2章について俯瞰してみたい。
「GAFA」という呼び方に象徴されるように現在、テクノロジーの世界はモバイルやソーシャル、クラウドを基盤にした膨大なデータを集約し、それらを高速かつ精緻に分析できる技術と人材を擁するデジタル企業にパワーが集中している。そして、かつては“国家”とまで形容されたIBMは、残念ながらその最先端グループの一角としてはみなされていない。特に2012年(ロメッティ氏がCEOが就任した年)以降、技術面においても経営面においても、IBMがGAFAに迫る勢いを得たことはなかった。
だが、2018年11月、約340億ドルに上る米レッドハット(Red Hat)買収のニュースが世界を駆け巡った(関連記事:米IBMが米レッドハットを340億ドルで買収へ、過去最大の投資でOSS/クラウド戦略を加速)。これをきっかけに、再び"Big Blue"の地力を取り戻そうとしているかのように見えた。GAFA全盛の時代にあって、IBMはいかにして最先端テクノロジー企業として復権を果たそうとしているのか。
第1章があっての第2章
ロメッティ氏(写真1)が2万6000名を超えるIBM Thinkの参加者に向けて発した冒頭メッセージ。そこで強調したデジタル戦略の第2章だが、その前には当然ながら第1章が存在する。
昨年までのIBMは、エンドユーザーのデジタルトランスフォーメーション(DX)への対応、ITコスト削減や調達の短縮を支援するためのクラウド導入促進、業務の一部へのAIの適用の開始といった分野に注力してきたが、これらはすべてこれから始まる第2章への準備段階、第1章として、IBMならではの地歩を築いていた段階であったと言える。
では、この先のデジタル戦略の第2章において、IBMは何を目指していくのか。ロメッティ氏がキーノートで示したのは次の3つだ。
●マルチクラウド/ハイブリッドクラウドへのフォーカス
●AIのスケール
●コグニティブエンタープライズ
これらを掲げて、第1章で固めた基盤を、クラウドとAIのパワーで一気にスケールしていく戦略であることをあらためて謳っている。
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