デジタル革新による変化の大波を乗り越えるためには、変化をいち早く察知し、的確な判断につなげるための高いデータ分析力が不可欠だ。そんなデータ分析を支えるBIプラットフォームもここにきて急速な進化を遂げている。「データマネジメント2019」のセッションでは、Tableau Japanでセールスコンサルタントを務める増田啓志氏が、企業の仮説検証を支えるBIプラットフォームの現状を、近年の技術的なトレンドを踏まえつつ解説した。
データ分析を高度化させる“3つ”の変化
ITの急速な進化が社会を大きく変えつつある。そのことは、デジタルならではの新たなビジネスモデルが旧来からの企業に退場を迫り、新たなコミュニケーションツールなどによって消費行動が様変わりしたことからも容易に理解できるだろう。
これらの根底にあるのがデータの爆発的な増加だ。そして、変化の大波を乗り越え、新たな成長軌道を描くためにも、変化をいち早く察知し、どう対応すべきかを的確に見抜くための高いデータ分析力があらゆる企業に強く求められている。
Tableau Japanでセールスコンサルタントを務める増田啓志氏は、「こうした要請に応えるべく、BIプラットフォームもここ数年で大きく変貌を遂げつつあります」と指摘する。それは具体的には次の3点だ。
トレンド①:自然言語でデータを分かりやすく扱える
1つ目は、「自然言語でデータを分かりやすく扱える」ことだ。従来、BIプラットフォームの操作には高度な専門知識を要した。だが、近年のAIによる自然言語処理技術の発達に伴い、一般的な言葉を使った処理の指示も可能になりつつあるという。2020年までに分析クエリの処理の半分が自然言語の操作に置き換わるとの報告もある。いわゆるデータとの対話が文字通り可能になりつつあるわけだ。
トレンド②:分析環境が業務で活用しやすくなっている
2つ目は、「分析環境が業務で活用しやすくなっている」ことだ。BIプラットフォームで従来確認できたデータは「昔ながらの帳票の延長」(増田氏)にとどまり、そのことがより幅広い業務での活用を阻む一因となっていた。だが、ダッシュボード機能の向上と、各種システムへの画面の埋め込により、自身の業務に関係の深いKPIを仕事中に自然と確認できるようなった。「モバイルツール向けの画面が用意されるなど、社内外を問わずデータを配信できるようになったことも昨今のBIプラットフォームの特徴です」と増田氏。
結果、BIプラットフォームの現場利用は急速に広がっている。例えば九州を地盤とするホームセンターのグッデイでは、業務効率化の一環として会議資料の作成をBIプラットフォーム「Tableau」により自動化。併せて、ダッシュボードによる情報共有先を取引先にも広げ、商談や各種計画の立案にも活用することで欠品/返品を減少させている。
「必要な情報は社外にも提供して効率化を目指すのが最近のトレンドです。BIプラットフォーム以外に調達・購買のSaaSなどでもその動きは盛り上がっています」(増田氏)
現場からITに精通した人材を集めて使い方を教え、現場で横展開することで、全社利用につなげているのもポイントだという。
トレンド③:データの民主化が加速
3つ目は、「データの民主化が加速していること」である。
かつてITは扱いに特殊な技能を要する限られた人のためのものだった。そうした“デジタルデバイド”が、PCやスマホの登場を機に確実に解消され、ユーザーは拡大の一途をたどっている。「BIによるデータ活用は、そこでの新たな転機になるはずです」と増田氏は強調する。
では、今回の民主化により、何がどう変わるのか。
データ分析は民主化前から基幹システムなどのデータに基づく定型レポートという形で実施されてきた。ただし、分析高度化に向け課題となっていたのが個別の分析作業である。
それらは定型レポートとは異なる切り口でデータを分析するものだが、データを個々に準備する必要があるため、データの入手だけでも一苦労。同様の理由から、分析結果に寄せられる疑問に対応するために、少なからぬ時間が取られざるを得なかった。さらに、個別分析の手法や結果を残す仕組みが存在せず、そこで得た知見の多くが捨て去られてもいた。
ソフト改革がデータ分析を拡大させる原動力
民主化後はこうしたデータ分析の姿が一変するのだという。具体的には、あらゆるデータを利用できるBIプラットフォームが、定型レポートと個別レポートの双方の出力基盤となることで、個別分析などで別途必要とされていたデータ収集の手間や時間が一掃される。また、個別レポートの作成で得た知見を定型レポートへ反映しやすくなり、定型レポートの継続的な改善も促される。
「つまり、定型レポートにあたるダッシュボードが個別分析のための出発点となり、ユーザーのアイデアが加わることでブラッシュアップされ続けるわけです。また、データ入手が容易になることで、それだけ意思決定の速度も向上します」(増田氏)
データの社内で加速させるには、まずはCoE(Center of Excellence)を設置し、できる限り早期に結果を出すことが重要なのだという。「そのためには、経営層の協力を得つつ、データをより重視するよう組織文化も変えねばなりません。そこでの成果は、“戦略”“組織”“制度”などのハードよりも、“共通価値観”“能力”“社風”“人材”などのソフトを変える方が、大変な反面で、より大きなものとなります」と増田氏は強調する。
データの民主化の代表例が米小売り大手のウォルマートの取り組みだ。同社では従来、約6カ月を要していたデータ入手のセルフサービス化を実現。驚くのはユーザーが全社で45万以上、アクセスが月当たり2億件にも達していることだ。これも、社内の地道なコミュニティ活動によるソフト変革の成果なのだという。
これらを説明後、増田氏はTableauのドラッグ&ドロップによる操作性の高さや、扱えるデータの豊富さを紹介したうえで、次のように話を結んだ。
「デジタル変革のためにデータの民主化を避けては通れません。である以上、これを好機と捉え、分析力を新たな経営の武器とすべき。ウォルマートの例からも、それは決して不可能なことではないのですから」(増田氏)
データの民主化により、企業間競争は新たな局面に差し掛かりつつあるようだ。
●お問い合わせ先
Tableau Japan 株式会社
URL: http://www.tableau.com/jp
Email::japan@tableau.com
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