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[データマネジメント2019]

データドリブン経営の実践に向けて、データトランスフォーメーションのための変革のポイント

2019年5月10日(金)

急速に変化していく市場を勝ち抜く鍵として「データドリブン経営」が注目されている。しかし、果たしてどれだけの企業が真の意味でそれを実践できているだろうか。PwCコンサルティングの高橋功氏は、「データマネジメント2019」において、一時的な施策で終わらせることなくデータ活用の効果を創出し続けるためには、継続的にデータガバナンスを機能させると共に、新しい企業文化を形成していくデータトランスフォーメーション(変革)を見据えた「推進計画の立案」および「体制整備」が欠かせないと語った。

経営判断に資するデータに内在する質と期待値のギャップ

PwCコンサルティング合同会社 テクノロジーコンサルティング シニアマネージャ 高橋 功 氏

 データドリブン経営というキーワードをよく見聞きする。ビッグデータを総合的に分析すると共に可視化し、費用対効果の高いアクションをとることで、効率化によるコスト削減や売上拡大、利益率改善などにつなげていくというものだ。

 このデータドリブン経営を真に実践するために、PwCコンサルティングのデータ&アナリティクスチームでデータマネジメントの専門家として活躍する 高橋功氏が説いたのが、「データトランスフォーメーション」のコンセプトである。「データの力でビジネス変革をもたらす」ことを目的としたデータマネジメントの推進活動を指すもので、大きく次の3つの方向性がある。

 まずは「個別試行」で、意思決定のさらなるスピード化と高度化を目指す。次に「企業としての展開」として、組織や部門単位にとどまらない企業文化としてのデータ活用の定着を図る。さらには「経営戦略」としてデータを活用したビジネスモデルの創造・変革を実現する。いずれも重要なアプローチであることは言うまでもないが、高橋氏が本セッションのメインテーマとして取り上げたのが、この2つめの企業としての展開だ。

 なぜこれが重要なのか。高橋氏は背景として、PwCが世界91か国のCEO1,378名に対して2018年に実施した最新の「第22回世界CEO意識調査2019」の結果を紹介した。ビジネスリーダーが意思決定を行う際に重要視しているデータには、「顧客の嗜好・ニーズ(94%)」「業績予測と見通し(92%)」「ブランド・評判(90%)」「ビジネスリスク(87%)」「従業員の意見やニーズ(86%)」「同業他社ベンチマーク(85%)」がある。しかし、社内外から実際に得られるデータの質と妥当性は、その期待を大きく下回っているのだ。例えば「顧客の嗜好・ニーズ」に対する質と妥当性は、わずか15%にすぎない。

ビジネスリーダーが着目する重要領域(経営判断材料に資するデータの質と期待値)

 しかもPwCは2009年にも同様の調査を公開しているが、そのときの結果を見比べても現在とほとんど変わらない。「ビッグデータを扱うテクノロジーはこの10年間で大きく進化しましたが、経営判断材料に資するデータの質と期待値のギャップは依然として埋まっていません」と高橋氏は強調した。

データ保護、データ活用、データマネジメントの三位一体で成り立つデータガバナンス

 埋まらないギャップの原因はどこにあるのか――。PwCが実施した先の意識調査によると世界のCEOおよび日本のCEOの54%が共に挙げているのが「分析能力を備えた人材の不足」である。また日本のCEOの50%は、「外部情報を数値化できていない」という課題も挙げている。

ビジネスリーダーが着目する重要領域(埋まらないギャップの原因)

 裏を返せば、これらの課題を解決に導いていくことが、データトランスフォーメーションの重要ポイントとなる。そして、そのために必要な取り組みとして高橋氏が説いたのが、「データの可能性を高めるデータガバナンス」である。

 もっとも、ガバナンスというとその直訳から、規制・統制というイメージを抱くかもしれない。しかし、実際は決してユーザーを縛ることを目的としたものではなく、「目標達成に向けた改革推進とそのサポート活動と捉えてほしい」と高橋氏は強調した。

 GDPR(EU域内の個人のためのデータ保護と管理を定めた規則)など新たな法規制への対応、IoTにより製品や設備から取得するデータの保護、機密情報の保護などデータ保護(Lock)はもちろん重要だが、データの可能性や価値を高める上でデータ活用(Unlock)と相反するものではない。データの高度なQCD(品質、コスト、納期)を維持・提供するデータマネジメントと三位一体で成り立つ活動こそがデータガバナンスであり、その相乗効果によって信頼あるデータを用いた業務活動や意思決定が進み、最終的に新たなビジネスモデルを創出することも可能となる。

三位一体のデータガバナンス

企業文化を形成する「推進計画」と「体制整備」へ

 三位一体で取り組むデータガバナンスの意義を再認識できたならば、次のステップとしてデータドリブンの企業文化を形成していくために必要となるのは、「推進計画の立案」および「体制整備」である。

 企業がデータの部分的活用(個別試行)から脱却し、全社的な展開を図るためには「具体的なROIを見極めた目標管理との同期」「組織横断の仕組みづくりとそのマネジメント」といった大きな壁を越えなければならない。そこで重要な役割を果たすのが推進計画なのだ。高橋氏は、①ビジネス意思決定とアナリティクス、②データとインフォメーション、③技術とインフラ、④組織とガバナンス、⑤プロセスと統合、⑥カルチャーと人材の6つの視点に基づいたトランスフォーメーション検討の進め方を示した。

推進計画/トランスフォーメーション検討の6つの視点

 一方の体制整備で求められるのが、CDO(最高データ責任者)を中心としたDGO(データガバナンス組織)、あるいはDMO(データマネジメント組織)の構築である。「経営者が常に望んでいるのは意思決定に必要なデータがタイムリーに提示されることで、そのためにも優れた分析能力とその推進力が不可欠です。ただ、人材を育てればよいわけでもありません。より重要なのは、その役割や機能を組織として持たせることなのです」と高橋氏は語った。

データガバナンス体制に求められる機能・役割

 このようにデータドリブン経営を見据えたデータトランスフォーメーションは、一朝一夕で成しえることはできない。推進計画を通してデータ活用の目標を設定し、組織的な合意を形成する。さらに全社的な協働・推進体制を整え、継続的な活動の中でチャンジマネジメントを実践していく息の長い取り組みが必要だ。


●お問い合わせ先

PwCコンサルティング合同会社
〒100-6921 東京都千代田区丸の内2-6-1
丸の内パークビルディング
TEL:03-6250-1200(代表)
E-mail:pwcjppr@jp.pwc.com
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