マイクロサービス、RPA、デジタルツイン、AMP……。数え切れないほどの新しい思想やアーキテクチャ、技術等々に関するIT用語が、生まれては消え、またときに息を吹き返しています。メディア露出が増えれば何となくわかっているような気になって、でも実はモヤッとしていて、美味しそうな圏外なようなキーワードたちの数々を「それってウチに影響あるんだっけ?」という視点で分解してみたいと思います。今回は、キャリアによるプレサービス展開を目前にした「5G」を取り上げます。
【用語】5G
新元号・令和とともに幕を開ける、5G元年。ご存じのとおり、第5世代(5th Generation)のモバイル通信規格です。
米ベライゾン(Verizon Communications)が2018年10月に月額50~70米ドル(約5600~7800円)で300Mbps対応5G家庭用固定ネットワークサービス「5G Home」を投入し、2019年4月5日には同社および韓国キャリアが世界に先駆けたモバイル5Gサービスを開始しました。日本では、大手携帯キャリアへの周波数割当が4月10日に行われ、9月のラグビーW杯でのプレサービス、翌2020年東京オリンピック・パラリンピックでの本格サービスをターゲットに、実証実験や設備投資が進んでいます。
5Gは、これまで本連載でも取り上げてきた、デジタルツインやMR(Mixed Reality:複合現実)、フォグ(エッジ)コンピューティングといったテクノロジーの本格的なインフラとして不可欠な次世代ネットワークです。従来は必要なときに人と人をつないできたコミュニケーションは今、その枠を超えて、リアルタイムであらゆるモノと人をつなぐ社会、あらゆるデータが生きてつながりたがる世界へとリアルに到来しようとしています。
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物理的に人間がその場にいなくてもサービス提供や製造といった生産活動が可能になるため、人材不足や労働生産性に悩む「超高齢化社会・日本」の救世主として期待されています。政府「未来投資戦略 2018」でも、Society 5.0やデータ駆動型社会の共通インフラと位置づけられました。
【イノベーション】5G NRが導くパラダイムシフト
5Gが新しいのは、データが流通するネットワークという通路を4Gの10倍に広げ、超高速、多数同時接続、超低遅延を実現する点です。「ミリ波」の活用やネットワークの小口化、分散処理によって、既存ネットワークや携帯通信網以外のネットワークを活用しつつ、データ流通のスピード、デバイス数とトラフィック量に劇的な変化をもたらします。
5Gは従来、移動通信に不向きと考えられてきた「ミリ波」と呼ばれる高周波数帯を広めに確保し、1~10mmの短い波長を利用します(図2)。高周波帯域に対応する5Gの無線アクセス技術を「5G NR(New Radio)」と呼びます。
高周波数帯の電波は、直進性が高く大容量の伝送にすぐれている一方、遠距離や障害物には弱く空気伝搬による劣化が大きいといった使い勝手の悪さがネックでした。それを、電波の通り道を太くする超多素子アンテナやネットワークスライシングによる小口化、エッジ(フォグ)コンピューティングの分散処理といった技術が問題を解決し、実装が進もうとしているのです。
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4G LTEやLPGAと共存、ハイブリッドワイヤレス時代へ
5Gは4Gをただちに置き換える規格ではなく、本格稼働後も4Gと共存しながら段階的にカバー範囲を広げます。モバイル通信の業界団体GSMAの予測では、2025年までに韓国は59%、米国は50%、日本は48%の通信が5Gへ移行する見込みです(図3)。
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4Gとほぼ同義であるLTEは、Long Term Evolutionの名称どおり、長期的進化のかたちで継続的アップデートを前提に3Gから4Gへのスムーズな移行を意図した規格です。5Gは、LTEを高度化した最新リリースの「LTE-Advanced」をベースに高周波帯NRの電波を併用することにより、超高速・多数同時接続・超低遅延の3要素を実現します。
しばらくは既存基地局のLTEネットワークを活用しながら、段階的に5Gシフトが進み、本格的な拡大期は2022年以降になると見られます。同時進行が見込まれる、携帯通信網を介さない低電力広域無線通信技術のLPWA(Low Power Wide Area)の整備により、リアルタイムの大容量通信では5G、センサーデータなどの取得にはLPWAを組み合わせた「ハイブリッドワイヤレス」の時代を迎えることになります。
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