[市場動向]

NTTと上智大、移動通信システムの電波の揺らぎから屋外の人流を推定するセンシング技術を実証

6Gが利用され始める2030年頃を目標にサービス展開へ

2025年5月26日(月)日川 佳三(IT Leaders編集部)

NTTと上智大学(本部:東京都千代田区)は2025年5月26日、商用運用中の4G無線基地局の電波から人物を検出する実証実験に成功したと発表した。既存の移動通信システムにおいてセンシング機能を活用できるようにする。今後は、第6世代移動通信システム(6G)が利用され始める2030年頃の実現を目標にサービス展開の検討・実証を行っていく。

 NTTと上智大学は、無線基地局が送信した信号の観測によって街中の人物を検出する実証に成功した。同期信号から得られる電波伝搬情報の変動をAIで解析した。既存の移動通信システムの新たな活用として、センシング機能の利用を可能にする(図1)。

図1:無線センシングの活用イメージ(出典:NTT、上智大学)
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 技術要素として、第6世代移動通信システム(6G)における、無線通信とセンシングを統合したISAC(Integrated Sensing And Communication)の活用を検討している。ISACは、通信用の電波の伝搬情報をそのまま利用し、通信機器のみでセンシングを可能にする技術である。

 表1は、移動通信システムの標準化団体間プロジェクト「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」が規定している無線センシング技術の主なユースケースである。両組織は次のように説明している。

 「ISACは電波を活用するため、センシング対象を撮影する必要がない。夜間などの暗い環境や、遮蔽物があって見通しがない環境などカメラが苦手とする状況でもセンシングできる。こうした特徴から、屋内外における各種環境での利用を想定している」

表1:移動通信システムの標準化団体間プロジェクト「3GPP(3rd Generation Partnership Project)」が規定している無線センシングのユースケース(出典:NTT、上智大学)
  対象 ユースケース 無線センシングによる付加価値
屋外 人/動物

・線路や高速道路への人/動物の侵入検知
・観光地の交通整理のための人流推定

・カメラや専用センサーの設置が不要
・プライバシーへの配慮
・夜間のセンシングが可能

車両

・交差点の死角に対する障害物の検知
・ADASのための車両周辺のセンシング
・渋滞状況のセンシング

・カメラや専用センサーの設置が不要
・見通しなしでもセンシング可能
・夜間でもセンシング可能

UAV(無人航空機、ドローン)

・UAV飛行軌跡の追跡
・UAV衝突回避のためのセンシング

・ビルなどGPSの誤差が大きい時の位置追跡
・見通しなしや夜間でもセンシング可能

天気

・降雨量や洪水のモニタリング

・専用センサーがない範囲もセンシング

屋内 工場

・工場におけるAMR/AGVの位置追跡
・工場における作業状況のモニタリング

・専用センサーの設置が不要
・見通しや照明状況に依存しないセンシング

自宅

・侵入者検知
・非接触な健康・睡眠モニタリング
・XRのためのジェスチャー認識

・カメラや専用センサーの設置が不要
・プライバシーへの配慮
・照明状況に依存しないセンシング

 NTTと上智大によると、現状では無線LANシステムを用いた屋内のユースケースが多数を占めており、移動通信システムを用いたセンシングの報告例は限られる。その報告例も、実験用の基地局や実験用環境での検証であるなど、実用性を示せていないという。

 こうした中で両組織は、商用運用中の無線基地局を用いた無線センシングの実証実験を進めてきた。今回の実証では、商用運用中の第4世代移動通信システム(4G)の基地局を活用して実証した(図2)。

図2:実験環境(上智大学四谷キャンパス内)(出典:NTT、上智大学)
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●Next:実証実験の内容

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