AWS(Amazon Web Services)のコンサルティングパートナーであるサーバーワークスは2019年7月30日、クラウド移行を検討している企業が抱えている課題と解決策をまとめたホワイトペーパー「クラウド移行と移行後の効果に関する調査2019~クラウド移行に踏み切れない企業が抱える課題と最適な解決策とは?」を公開した。
ホワイトペーパーでは、現在のクラウド利用の動向について紹介している(図1)。調査の目的は、クラウド移行に関わる課題を把握することである。調査対象は、製造業・金融業・保険業・不動産業において情報システム部門に所属している人。調査時期は2019年4月。調査方法は、インターネット調査。ジャストシステムが調査を実施し、スクリーニング調査で9669件、本調査で441件の有効回答を得た。
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調査結果によると、29.7%の企業が「すでに移行を経験している」と回答し、「移行を検討している」企業は20.9%だった。導入企業は増えており、特にグローバルにビジネスを展開するエンタープライズ企業や株式上場企業をはじめとする大企業を中心に、クラウド利用が進んでいる。
クラウドを利用する理由については、「コスト削減」がクラウド移行に期待していることで最も多かった。システム基盤となるハードウェアを資産として所有するオンプレミスに比べ、利用した分だけ課金が発生するクラウドは、結果的にコスト削減につながると考える企業が多いと見られる。
「運用管理者負担の軽減」、「ハードウェア保守からの脱却」といった情報システム部門が担当するシステム運用負荷の軽減を期待する声も多く挙がった。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、ビジネス戦略にデジタル技術を取り入れる企業が増えるなか、情報システム部門の役割は従来のシステム監視・管理・保守から、戦略立案・執行へと変わりつつある。これを実現するためにも、クラウド利用による運用負荷の軽減という効果に期待する企業が多いことが分かる。
実際にクラウドに移行した企業では、それらのメリットを実感している。「すでに移行を経験している」企業が1番多く挙げたメリットは「ハードウェア保守からの脱却」で、2番目は「コスト削減」、3番目は「運用管理者負担の軽減」だった。
「クラウド移行で懸念すること・心配すること」を聞いたところ、最も多かったのは「セキュリティが不安」という声だった。複数の企業がシステム基盤を共用するクラウドには、セキュリティに対する懸念が残っている。クラウドベンダーはセキュリティ関連サービスを拡充させ、セキュリティベンダーもクラウドに対応したサービスを提供しているが、これらの事実をうまく伝えきれていない。
「スキル、知識が不足している」、「十分に使いこなせない」という不安も少なくない。クラウドを使いこなすには、ある程度のスキルや知識が求められるが、一方でクラウドの利活用や運用管理を支援するインテグレーターがあるため、社内にスキルや知識がなくても十分に使いこなせる環境は整いつつある。
多くの企業が「クラウド運用のための人的リソース不足」に悩み、それがクラウド移行を阻んでいる側面も見られる。クラウド運用の人的リソースが足りているかどうかを尋ねたところ、「いいえ」と回答した企業は半数近くに上った。ビジネスの業績向上に直結しない情報システム部門は、人員削減の対象にされがちだ。業務の負担が増えて、人的リソースが不足していても、簡単に補充ができないのは、企業に共通する悩みとなっている。
こうしたリソース不足に対し、企業はどのような対策を講じているのかを質問したところ、最も多い回答は「わからない」で、2番目は「特になし」だった。
一方、採用を強化したり、社員教育・育成したりといった施策に取り組む企業もあるが、思いのほか多かったのが「アウトソース」だった。外部のシステムベンダーにシステム運用をアウトソースすることで、人的リソース不足を解消しようという思惑が見られる。
クラウド利用は、ハードウェア調達や保守をベンダーに任せることが可能だ。クラウドに精通したインテグレーターのなかには、ソフトウェアの稼働監視やセキュリティも含めたシステム運用を受託できるところもある。サーバーワークスでは、こうしたアウトソースを上手に活用することが、リソース不足の解決策の1つになるかもしれない、としている。