[イベントレポート]
技術の方向性、国内先行事例、会計監査への適用─語られたプロセスマイニングの最前線
2019年12月2日(月)岡崎 勝己(ITジャーナリスト)
国内でも普及に向け製品拡充と高機能化が急速に進んでいる「プロセスマイニング」。ビジネスに与える影響とは──。「プロセスマイニング コンファレンス 2019」(2019年9月26日/主催:インプレス IT Leaders)のアフタヌーンセッションに、ウィル・ファン・デル・アールスト博士、KDDI ビジネスプロセスマイニンググループリーダーの近藤裕司氏、あずさ監査法人 Digital Innovation部 パートナーの新出谷崇氏が登壇。それぞれの立場から、プロセスマイニングの技術の方向性、そしてその活用がもたらす企業活動の“近未来”を展望した。(撮影:鹿野 宏/Lab)
予測した変化を即座にプロセスへ落とし込む
同分野に特化したメディア主催イベントとしては国内で初開催となるプロセスマイニング コンファレンス 2019。アフタヌーンセッションの開幕を告げたのは、ドイツのアーヘン工科大学教授のウィル・ファン・デル・アールスト(Wil van der Aalst)博士(写真1)。午前のキーノート(関連記事:“生みの親”アールスト博士が説く「すべての企業がプロセスマイニングに着手すべき理由」)に続いて、アフタヌーンリマークスとして再登壇した。プロセスマイニングの生みの親にして、この分野の研究を長年牽引し続ける同氏は、満席の会場に向かって次のように語った。
写真1:ドイツ アーヘン工科大学教授のウィル・ファン・デル・アールスト氏「プロセスマイニングは、社内業務のリアルタイム把握のために進化を続けてきました。この目的はほぼ達成されたことで、今後の焦点は履歴データによる未来予測と、いち早いアクションの支援に移りつつあります」
プロセスマイニングの今後の進化、その技術課題としてアールスト氏が挙げたのが、多様なプロセスモデルの統合だ。一例を挙げれば、プロセスマイニングと、かねてからのBPMのモデリング手法には、「いまだ“粒度”で少なからぬ違いがあります」(同氏)。マイニングの結果を実際の業務プロセスに即座に落とし込むには、このギャップ解消が不可欠だという(図1)。
図1:プロセスモデリングとプロセスマイニングのギャップ(出典:ウィル・ファン・デル・アールスト氏)ただし、技術革新により課題は遠からず解消されると、氏はここについて楽観視する。その先に氏が描くのが、将来課題の対応に向けた具体策がプロセスマイニングのAI診断機能で自動提示され、かつ、業務に自動的に反映される新たなる世界だ。とはいえ、そこでの落とし穴には注意が必要だという。
「因果関係と相関関係は大きく異なります。ただし、データだけを見ていては、AIが両者を取り違えてしまう可能性を否定することはできません。例えば、人が増えれば犯罪率は増え、それはアイスクリームの消費量も同様です。では、犯罪率とアイスクリーム消費量に因果関係があるのか。最終的な判断は、現段階では、やはり人が担う必要があるでしょう」(図2)。
図2:相関関係は因果関係を含意しない(出典:ウィル・ファン・デル・アールスト氏)現場主体のシステム開発に向けた科学的なアプローチ
続いてはKDDI。プロセスマイニングの国内先行ユーザーとしての登壇だ。同社技術統括本部 次世代運用推進本部 運用システム開発部 ビジネスプロセスマイニンググループリーダーの近藤裕司氏(写真2)は、同社でのプロセスマイニング適用で目指す「現場主体のシステム開発」について解説した。
写真2:KDDI 技術統括本部 次世代運用推進本部 運用システム開発部 ビジネスプロセスマイニンググループリーダーの近藤裕司氏KDDIが取り組みに着手した背景には、システムは本来、現場のために整備されるものだが、現場への理解不足からIT部門と現場とで対立を招きがちだったことがある。「意見の溝を埋めるための科学的な手法を模索し、最終的にたどり着いたのがプロセスマイニングでした」と近藤氏は説明した。
近藤氏は取り組みで成し遂げたいことを整理し、プロセスマイニングツールの機能評価を行った(図3)。その結果、市場での実績や処理能力、さらに分析結果に基づく改善の仕掛けの作りやすさなどから「Celonis」を採用。2019年1月からPoCを開始し、現在、社内展開を進めている最中だ。
図3:プロセスマイニングの実践:評価(出典:KDDI)拡大画像表示
そうした取り組みの中で直面し苦労している課題が、「KPI設定のための体制づくり」と「データの発掘」なのだという。現場主体を掲げる以上、KPIの設定には現場を巻き込む必要がある。ただし、現場がプロセスマイニングに不慣れなことで、「業務課題と業務データを関連付けることに苦労しているのが実情です」と近藤氏。また、データによっては、生成の仕組みを新たに用意する必要もあるからだ。
こうした課題が残る一方で、業務プロセスの全体的な可視化を進めることで、実際のプロセスからの「正しい業務かの判断」「業務とほしいデータの結びつけ」を着実に進めることの重要性を説明した。
日本企業のアーリーアダプターとなるKDDIだが、近藤氏は、プロセスマイニングの取り組みの輪が国内企業にも広がり、さまざまな情報共有がなされることを願っているとして、来場者に次のように呼びかけた。
「業務は見直してこそ改善が進みます。その点で、日本企業は欧米に遅れを取りがちですが、今回、プロセスマイニングという新たなチャレンジをテコに、そこからの脱却を目指します。皆さんも一緒にやりましょう」
●Next:プロセスマイニングが会計監査を変える!
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