[イベントレポート]
費用感は? 導入の課題は?─「プロセスマイニングの疑問」に答える!
2019年12月4日(水)齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)
基幹システムなどのログデータを基に業務プロセスを自動的に分析・可視化する手法として注目を集めているプロセスマイニング。「プロセスマイニング コンファレンス 2019」(2019年9月26日/主催:インプレス IT Leaders)のクロージングQ&Aセッションには、ベンダー、ユーザー、パートナーの各エキスパートがそろい踏みし、会場で挙がったプロセスマイニングに対するさまざまな疑問にそれぞれの立場から回答した。(撮影:鹿野 宏/Lab)
8人のエキスパートが会場からの質問に回答
プロセスマイニングは「ツールを導入すれば、直ちにプロセス改革を実現する」といった“魔法のツール”ではない。だれが主導すべきか、担当者はどんなスキルセットが必要か、マイニング結果をどう生かせばよいか……国内では前例のない新しい分野だけに、さまざまな疑問点が出てくる。プロセスマイニング コンファレンス 2019の締めくくりに、ツールベンダー、SIer、コンサルティングファームのそれぞれの立場から、来場者の疑問にこたえるクロージングQ&Aセッションが用意された。
回答者として登壇したのは以下の8名である(写真1)。インプレスの田口潤編集主幹をモデレーターに、当日会場で来場者から募った計33件の質問に、それぞれの立場・見解から回答するスタイルで進行した。
(写真1、左から順に)
Celonis日本法人 代表取締役社長 小林裕亨氏
ハートコア ファウンダー兼代表取締役社長/CEO 神野純孝氏
NTTデータ イントラマート エンタープライズソリューション本部副本部長兼イノベーション推進担当 内田直知氏
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)未来技術研究所 エキスパートセールス 主任 加悦良康氏
KDDI 技術統括本部 次世代運用推進本部 運用システム開発部 ビジネスプロセスマイニンググループリーダー 近藤裕司氏
あずさ監査法人 Digital Innovation部 パートナー 新出谷崇氏 プロティビティLLC 佐渡友裕之氏
SAPジャパン ソリューション統括本部 ソリューションCoE アナリティクス シニアビジネスデベロップメント 福岡浩二氏
質問の内容は、導入の課題や費用感、導入メリットといった基本的なものから、マイニングに必要なデータをどう整備するか、SAPとの連携方法、プロセスをどう可視化するか、各社のツールの使い分けなど多岐にわたった。
プロセスマイニングツールの費用感は?
まず、ユーザーにとっての大きな関心事の1つであるプロセスマイニング導入・構築の費用感についてである。
プロセスマイニングツールベンダー独Celonis日本法人の小林氏(写真2)は「Celonisの場合、ユーザー数と必要なコンピュータリソースのリソース量で決まります。独シーメンスのように数千名のユーザーに利用いただく場合は年間で億単位ですが、中小企業規模で利用する場合は数百万円から利用が可能です。通常のエディション以外にも基本機能が利用できる無料版を提供しています」と規模や活用度合いによって大きく変動することを説明した。
Celonis製品のコンサルティングサービスを展開するプロティビティの佐渡友氏(写真3)は、「ライセンス費用に加えて導入に向けてPoC(Proof of Concept:概念実証)/PoV(Proof of Value:価値実証)で効果検証を行う場合、その費用が必要です。当社の場合は1カ月前後のPoVのケースで、300~500万円が目安です」と補足した。
Signavioとの連携ソリューションを提供するNTTデータ イントラマートの内田氏(写真4)は、「費用を見て導入を決める経営層はおそらくいません。日本企業にあっているのはまず具体的な成果を確認してみること。プロセスオーナー、データオーナー、連携のためのインタフェースが分かる方に実際試してもらい『なぜこの結果が出るのか』を実感して始めて費用の話になります」と、企業個々の事情にあった導入を前提に、同社の場合、ツール提供よりはサービスとして提供することが重要だとした。
また、国内で伊コグニティブテクノロジー(Cognitive Technology)のmyInvenioを提供するハートコアの神野氏(写真5)も「イタリア本国では定価が決まっていますが、日本には合わないと考え、柔軟に価格を設定しています。トライアル、PoCは無料。実際に利用する場合もコンサルティング料を含めて300~500万円から。規模が大きくなると億単位になる場合もあります」と説明した。
これに対し、先行ユーザーの立場で登壇したKDDIの近藤氏(写真6)は「現場のユーザーや経営層にどうメリットを説明するかは課題。新しい技術であり、ぜひ取り組むべきとして行動しました」と、実際の導入に至るには、ユーザー側の主体的なアクションが必要であると指摘した。
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