[調査・レポート]

2019年のシステム障害件数は前年の2倍─消費税増税、キャッシュレス決済の普及が影響

IPAが2019年後半の国内システム障害情報一覧を公開

2020年2月27日(木)杉田 悟(IT Leaders編集部)

情報処理推進機構(IPA)社会基盤センターでは、社会に影響を与え全国紙等に報道された情報システム障害情報を蓄積、半年ごとに取りまとめたものを「情報システムの障害状況」として公開している。その最新版となる2019年後半のデータが2020年2月25日に公開された。2019年7月から12月までに報道された情報システムの障害は60件。これとは別に消費税増税関連の障害が29件報道されており、IPAは、これまでにない高い水準になったとしている。

 情報処理推進機構(IPA)社会基盤センターが公開している情報システムの障害状況は、全国紙やWebメディアなどで報道された国内の情報システム障害の件数・内容をまとめたレポートである。2010年から情報を蓄積している。今回は、2019年後半(7月~12月)に報道のあったものを取りまとめて公開した。

 2019年7月~12月に報道された情報システム障害の件数は89件だった。このうち29件は、消費税増税に伴うシステム障害。月平均は14.8件で、2019年前半の5.5件、2018年後半の5.2件、2018年前半の5.8件などと比べて飛びぬけて高い水準となった。消費税関連の29件を除いた60件で見ても、33件だった2019年前半の2倍近い発生件数となっている。2019年通年の発生件数は122件で、月平均は10.2件だった。こちらも2018年通年(発生件数66件、月平均5.5件)の2倍近くとなっている(図1)。

図1:報道された情報システム障害発生件数の推移(出典:情報処理推進機構)
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 具体的にどのようなシステム障害が報道されたのか、細かく見ていくと、ファミペイ、PayPay、QUICPayなど、ポイント還元キャンペーンなどで注目を集めて急速に普及しつつあるキャッシュレス決済サービスに関連するシステム障害が9件あった。IPAは「まだ登場から日が浅くシステムの可用性、信頼性に不安が残り、社会インフラとしては未成熟である」としている。システム側での対策と併せて、利用者側での代替となる決済手段を準備するような防御策が必要だとしている。

 また、2019年8月にAWS、11月に日本マイクロソフトのOffice 365に障害が発生して、いずれも多くの利用者に影響を与えている(関連記事AWS東京リージョンで発生した大規模障害は冷却制御システムのバグが原因)。

 12月には日本電子計算が自治体向けに提供するクラウドサービスに深刻なシステム障害が発生し、53の自治体、広域事務組合に影響を与えた(関連記事全国約50の自治体でWeb/電子行政サービスがダウン、自治体専用IaaS「Jip-Base」でシステム障害)。そのほか、自治体や地方銀行、信用金庫などで利用が進む共同利用型サービスの障害が目立った。

 パブリッククラウドや共同利用型サービスでシステム障害が起こると、被害は広範囲にわたる可能性が高く、社会的影響も大きい。サービス提供者が、システムの高信頼化、可用性の向上に取り組んでいくのは当然のことだ。一方、利用者側も、「事故によるサービス中断がどの程度の損失を招くのかを評価し、それを回避するためのコストとのトレードオフを良く吟味して対策を打つ必要がある」(IPA)としている。

●Next:災害・防災情報配信システムにも影響

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