[インタビュー]

データ分析製品のサブスクリプション移行を完了、カスタマーサクセスに注力して業績回復へ─米テラデータCFO

財務責任者のマーク・カールハーン氏自らによる業績評価と「テラデータの組織変革」

2020年3月10日(火)指田 昌夫(フリーランスライター)

データウェアハウス専業ベンダーから、アナリティクスプラットフォームベンダーへ。数年かけて事業シフトを敢行した米テラデータ(Teradata)。伴って2019年はアナリティクス製品/サービスの販売形態もサブスクリプションモデルへと舵を切った結果、同年度通期の業績は悪化し、就任1年目だったオリバー・ラッゼスバーガーCEOも同年11月に退任を余儀なくされた。現在、テラデータは新しいリーダーの人選を進めつつ、社長兼暫定CEOのビクター・ランド氏の下で新たな事業モデルに沿った施策を展開している。同社のCFO(最高財務責任者)、マーク・カールハーン(Mark Culhane)氏への取材機会を得たので、業績や株価の背景、今後の打ち手などを単刀直入に聞いてみた。

サブスクリプションへの転換は生みの苦しみ

──2019年会計年度の通期売上高は前期比12%減の18億9900万米ドル、経常利益は170万米ドルの赤字と、数字が示す業績は厳しく映っています。ずばり、この業績をどう評価していますか?

 2019年はテラデータにとって非常に大きな変化の年でした。パッケージソフトウェアのライセンス販売モデルから、経常的なリカーリング、サブスクリプションのモデルへと転換しました。このシフトに伴って業績は一時的に悪化しましたが、その裏側にある当社の変革のストーリーをお話ししたいと思っています。

写真1:米テラデータ CFOのマーク・カールハーン氏

 内訳を見ると、ソフトウェアライセンス販売収入が大幅減となりました。2018年度に比べて2億3500万ドルの減少です。その代わりに、サブスクリプションの売り上げが急速に拡大し、ARR(年間経常売上)は前年比で9%増加しています。

 ただし、両者の売り上げの計上のされ方には違いがあります。ライセンス販売は売った時点で大きく売り上げが立ちますが、サブスクリプションの売り上げは時間の経過とともに積み上がっていきます。また、サブスクリプションは顧客の契約期間が12カ月、24カ月、36カ月かの違いによっても売上額が変動します。サブスクリプションを順調に伸ばすことができた反面、2019年度は移行期のため、このモデルがもたらす長期的な利益貢献が得られない決算となりました。

──サブスクリプション移行に伴う生みの苦しみがあったと。

 そうですね。2019年度の決算でもう1点言及すべきは、コンサルティング部門の売り上げが落ちたことです。その理由は、私たちがサブスクリプションで顧客企業に届ける新しい主力製品「Teradata Vantage」の展開に伴い継続的なコンサルティング契約が増加し、単年度での売り上げが小さくなったからです。こちらも、年度を経るごとに収益が積み上がることを見込んでいます。

 今のテラデータの基本戦略はサブスクリプションへのシフトです。2019年度のライセンス販売の売り上げは1億600万ドルでした。遡ると2018年は3億4000万ドル、2017年度は4億3000万ドルもありました。2019年度は、これだけ急激な減少を、サブスクリプションの収益増ではカバーしきれませんでしたが、移行による業績への悪影響はここで終わったと考えています。2019年度は新規契約の88%がサブスクリプションになっており、2020年度以降の収益は好転すると見ています。

株価低迷はCEO不在の影響が大きい

──2019年度の決算について、今の説明を聞けば納得できる気もしますが、株式市場は今のところそう思っていないようです。株価を見ると、2019年秋からの下落に今も歯止めがかかっていません(注:取材日は2020年2月20日)。株価は将来の利益を反映するものと言われます。今の説明どおりであれば、底打ちの兆しが見られてもよいと思うのですが。

 未公開企業と違い、上場企業が業態変更の際に厳しいチェックを受けることは承知しています。現在の株価は、昨年末に取締役会がオリバー・ラッゼスバーガーCEOの退任を決めたことの影響が大きいと考えます。正式なCEOが不在であるという、短期的に不安定な状況にあるため、市場に悪い反応が出ています。CEOが正式に決まれば、株式市場の信頼も回復すると信じています。テラデータの戦略として、引き続きVantageプラットフォームに注力していくということ、サブスクリプションモデルを推進していくことはまったく変わりません。

──新しいCEOの選考は順調なのでしょうか?

 はい、すばらしい人材が候補に挙がっており、取締役会の最優先事項で選考に取り組んでいます。新しいCEOには、テクノロジーへの理解はもちろん、アナリティクスによるデータ活用の重要性を熟知している人物が就くべきと考えています。また、キャリアの中で全社的な変革を経験していることも重要です。いつとは言えませんが、近々発表できると思います。

──ライセンス販売でTeradataを購入した既存の顧客企業がサブスクリプションに移行する場合と、新規の顧客がサブスクリプションを購入する場合があると思いますが、どちらが中心になっていますか。

 今は既存顧客の移行のほうが多いですね。ほとんどの顧客に移行を快諾いただき、いわゆるクリティカルマスは超えたと思っています。これからは新規顧客の獲得にさらに力を入れていく計画です。ライセンス契約が終了した段階で、買い取るという判断をした顧客はほぼゼロで、大半がスムーズにサブスクリプション契約へと移行してくださっています。

──既存顧客向けのサブスクリプション移行プログラムが、想定どおり機能したわけですね。

 そうです。プログラムに基づき、我々も顧客に新しい製品・モデルへの理解を深めてもらう努力をしました。特筆すべきは、テラデータの販売パートナー各社の理解です。パートナーの皆さんが顧客と今まで以上に深くかかわっていただくことで成し得た成果だということです。

●Next:テラデータの実践から導き出された企業の経営変革、3つのポイント

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