ログデータ解析ソフトウェアベンダーのSplunk Services Japanは2020年3月17日、データ活用の成熟度と企業の収益・コストの関連にまつわる調査の結果を発表した。日本企業は、経営の意思決定にデータを活用している割合では他国を抑えて1位だが、一方でデータ活用の成熟度は最下位となった。分析ツールや人材への投資が少ないことが理由として挙げられる。
米Splunkは、米Enterprise Strategy Group(ESG)と共同で、企業においてデータ活用がもたらす企業経営や財務への影響を調査した。2019年夏、7カ国(オーストラリア、中国、フランス、ドイツ、日本、英国、米国)、8業界の経営幹部およびIT意思決定者1350人を対象に実施している。
調査の結果、すべての国の全業界で、データの活用が収益の増加やコストの削減などに効果があることが分かった。例えば、過去12カ月における収益の増加率を聞いたところ、データ活用の成熟度が低いグループの平均が2.84%なのに対して、データ活用の成熟度が高いグループの平均は5.32%と、より大きかった。
調査では、データ活用の成熟度を判断するための質問によって、回答企業を3つのカテゴリに分類した。さらに、データがもたらす経済的な影響を調査した。こうして、データ活用の成熟度とデータの価値の相関を調べた。7カ国の国別比較や、8つの業種も比較した。
活用データの範囲などでデータ活用の成熟度を3つに分類
調査では、データ活用の成熟度に応じて、企業を3つに分類した(図1)。この結果、「データデリバレイター」(データ活用を検討中)に該当する企業は49%、「データアダプター」(データを活用している)に該当する企業は40%、「データイノベーター」(データを先駆的に活用している)に該当する企業は11%となった。
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データアダプターは、社内データをフルに活用できておらず、運用して価値を引き出せているデータの割合は32%にとどまる。データアダプターは、データ戦略に重点を置き始めたグループだが、まだ発展途上であり、社内データの使用率は41%にとどまる。
これに対して、データイノベーターは、データ活用を通じて収益面とビジネス面で成果を上げているグループである。社内データの48%を業務でリアルタイムに活用できている。
このように、活用しているデータの範囲とリアルタイム性によって、データ活用の成熟度を分類できる。
Splunk Services Japanは、最もデータ活用の成熟度が高いデータイノベーターの特性を3つ挙げる。データを重視した文化を築いていること、IT運用やセキュリティやマーケティングや財務など幅広い領域でデータを活用していること、AIを活用していること、――である。
データ活用の成熟度は企業の収益・コストに直接影響する
データの活用度が最も高いデータイノベーターの5社に1社は、過去24カ月間に開発した製品やサービスから年間収益の20%以上を得ている。これに対して、データデリバレイターではわずか2%にとどまる。また、顧客維持率の目標を達成できていない企業の割合は、活用度が最も低いデータデリバレイターが13%であるのに対して、データイノベーターは3%に収まっている。
データ活用の効果としての過去12カ月間における収益の増加率も、データ活用の成熟度によって変わる(図2)。最もデータ活用の成熟度が高いデータイノベーターは、データを有効活用することによって、過去12カ月間で収益が平均5.32%増加していると回答している。これに対して、データアダプターでは3.97%、データデリバレイターでは2.84%の増加にとどまる。
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データ活用の効果としての過去12カ月間におけるコストの削減率も、データ活用の成熟度によって変わる。最もデータ活用の成熟度が高いデータイノベーターは、データを有効活用することによって、過去12カ月間でコストが平均4.85%減ったと回答している。これに対して、データアダプターでは3.94%、データデリバレイターでは3.03%の削減にとどまる。
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