NECと建設・IT関連企業で構成するワーキンググループは2020年4月27日、5Gを活用した建設現場の安全性向上への取り組みとして、高所作業時の墜落防止に必須である安全帯の使用を促進するシステムを共同で開発したと発表した。同プロジェクトでは、建設業界の企業にヒアリングを行うとともに、複数のIT関連企業とディスカッションや試作を行い、実際の鉄塔を用いた実証試験によって安全帯使用の促進に有効なことを確認したという。
現在、5Gの商用化が進められるなかで、「超高速・大容量通信」「多数同時接続」「低遅延」という5Gの特長を活用した様々な分野での新しいサービスが検討されている。NECは、様々な企業とパートナーリングを組み共創を進める「5G Co-Creation Working」を2018年に立ち上げ、多様な分野で活動を行っている。今回の実証は、同ワーキングのなかで建設関連企業やIT関連企業などNECを含む9社が参加する建設ワーキンググループによって行った。
建設ワーキンググループの参加企業(NEC除く)は、アバナード、ケンブリッジコンサルタンツ、CIJネクスト、錢高組、Solace、プロフェッショナル・ネットワークス、ユビテック、日本電気通信システムである。
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今回の実証で用いたシステムでは、高所作業場所にサインビーコンを設置し、作業員のヘルメットには振動ビーコンを取り付ける(図1)。作業者が所定の高所エリアに入ると、振動によるアラートで安全帯の使用を促す。安全帯のフックにはセンサーを取り付けてあり、フックを掛けるとアラートは停止する。フックの使用状況や作業員の位置情報は無線ネットワークによって常時サーバーに送られるため、現場責任者は管理画面で安全帯の使用状況をリアルタイムに確認できる。蓄積されたデータを用いて、作業場全体の安全帯使用状況を分析することも可能だ。
実証は、2020年3月にNECネッツエスアイの研修施設内の鉄塔を用いて行った。そして、アラートによる作業員への安全帯使用の通知や、無線ネットワークを通じた使用状況の確認やデータ化などに成功したという。錢高組は「今回の実証でICT活用による墜落事故防止の可能性が見えてきた」と評価したとしている。
同ワーキンググループは今後、5Gを活用して作業現場からリアルタイムで高精細な映像を送信し、安全帯の使用状況を管理者が視覚的に確認できるようにする。また、外部関係者へのヒアリングを通じて高精細映像を活用した多様な労働災害防止対策などを発案・検討していく考えだ。
背景として、近年、建設業界で恒常的な人手不足が問題になっており、労働環境を向上することで魅力的な職場を訴求して、多くの人材を集めることが課題になっていることを挙げている。
建設業界では労働災害発生数が多く、全産業における建設業の死亡災害は全体の34%を占めており、さらに死亡・死傷災害の原因を見ると「墜落・転落」が最多となっているという。