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[市場動向]

DXに「EA」が不可欠な理由─マスタープランなき政府の新型コロナ対策を反面教師に

2020年4月28日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

政府や行政機関の新型コロナウイルス対策は、次のどちらに該当するか?「A:確固としたマスタープランの下で、状況をモニターしながら臨機応変に計画を見直している」「B:マスタープランはなく、政府や各省庁、自治体など関係組織がそれぞれに適切と思われる策を講じている」──。答えがどちらかはさておき、未曾有の何かに対処するとき、Aが望ましいことは確かだろう。これはレガシー刷新やデジタルトランスフォーメーションに取り組む企業にも通じる話である。日本ではほとんど語られない「EA(Enterprise Architecture)」を切り口に考えてみたい。

他国と比較した新型コロナ政策のダメさ加減

 テレビ、新聞に限らず、ネットを見ても、日々のニュースは新型コロナウイルス(COVID-19)関連一色だ。海外・国内とも政治・経済は新型コロナ対策が最優先だし、イベントやスポーツに至っては言わずもがなだ。必然的に関心の度合いとは無関係に、だれもが感染者数の推移や世界各国の対応策、医療体制や対応策の巧拙などに敏感に、詳しくなっていく。

 かいつまんで言えば、日本は医療崩壊の瀬戸際にありながらも、絶対的な感染者数や死者数が世界的に見て少なく、自粛要請やソーシャルディスタンスの確保で何とか持ちこたえている。一方で、人口あたりの医療ベッド数は世界一なのにICU(集中治療室)の数は少ない/防護服など医療資材が不足している/PCR検査を増やすと言っているのに一向に増えない、といった問題が顕在化。にもかかわらず、何らかの大胆な手が打たれているようには見えない、といったことだ。

 加えて、今すぐに現金が必要な企業や個人への給付・補償がなかなか実行されないのに、相当の費用をかけてさほど重要とは思えない「アベノマスク」を生産し配布を急ぐ……。政府支持率が示しているように、対策をうまくやっているように見える台湾や韓国、ドイツなどに比べると、日本の政府や行政機関(自治体も含む)のダメっぷりは、なぜそうなってしまうのか不思議なほどである。

 2020年4月27日時点でも、ゴールデンウィーク中に医療機関が休業するためPCR検査の件数が減るという情報があった。治療に尽力する医療機関の休業は当然にしても、対策を進める上でPCR検査は最優先課題のはず。なぜ件数を維持・増加するように手を打たないのか、理由がわからない。結果として、4月7日に発令した緊急事態宣言を解除するタイミングも、5月6日から2週間後の5月20日、状況次第ではそれより先になってしまうという。

緊急事態が続く中で、日本の政府や行政機関の対応には首を傾げざるをえない

2025年の崖やDXへの取り組みではどうか

 さて、IT専門メディアなのにもかかわらず、IT Leadersであえて新型コロナウイルス対策の状況に言及するのには理由がある。情報システムにおけるレガシー問題(≒2025年の崖)やその先にあるデジタルトランスフォーメーション(DX)への日本企業の取り組みと、新型コロナに対する日本の政府や行政機関の対策に、強い類似性があるように思えることだ。

 というのも、2025年の崖やDXへの取り組みに関して、日本では「必要なことを、できるところからはじめる」「小さくはじめて段階的に拡大する」といった傾向があると思える。例外はあるにせよ、2025年の崖について言えば、システムを構成するハードウェアやミドルウェアの保守切れ、あるいはシステムを担当してきた人材の退職などをきっかけに、対応に着手するようなケースである。このように、気づくところから着手する/声が強いところの要求に応えるといったアプローチは、その他の多くのことを考慮しない点で効果的ではなかったり、別の問題を引き起こしたりしかねない。

 新型コロナ対策で言えば、PCR検査や医療体制の問題を除いても、最初に行うべきは小中高の一斉休校だったのか/その際、給食などの事業者についてどう配慮したのか/補償なしの休業要請が将来の税収減などの経済損失をもたらす可能性をどれだけ考慮したのか──など、さまざまな疑問が提起されている。せっかくのマイナンバー制度が現金給付や補償と何の関係もないように見えるのも不思議だ。

 結局のところ、場当たり的で、限られた専門家や団体の声だけを拾っている印象がある。もしそうだとするなら、アフターコロナにおいて、企業はすぐれた国の対策を参考にしつつ、ダメな国の対策を反面教師にしてビジネスの高度化・変革を進めるべきだろう。新型コロナに対する各国の対策は格好の研究材料になり得るわけである。

 ここでITやデジタルに話を転じると、レガシー問題もDXへの取り組みも日本企業に限った話ではない。では諸外国企業は、それらをどのように実践しているのか──これが本稿の本題である。ポイントになるのは、「EA(Enterprise Architecture)」だ。

●Next:今の企業に、EAが必須で求められる理由

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