[調査・レポート]

ガートナー、外部委託コスト最適化のためのフレームワークを発表

2020年6月3日(水)IT Leaders編集部

ガートナー ジャパンは2020年6月2日、企業が外部委託コスト最適化に向けた施策を進めるためのフレームワークを発表した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によって全社のコストが見直される中、IT関連業務の外部委託が進む国内企業は、同フレームワークに基づいてコスト最適化に取り組むべきだとしている。

 ガートナー ジャパンが2020年4月に実施したユーザー調査では、COVID-19の影響によって、40%強の企業が今後の「IT支出全体を削減する見通し」と回答した。中でも、「開発費 (外部委託費)」予算を削減する意向を持つ企業は43.5%に上った。

 実行中のプロジェクトを中断するだけでは、十分なコスト削減効果が得られない。開発費予算を削減する企業は、実施中のプロジェクト以上に、着手前の計画段階にあるプロジェクトについて、延期/中止や規模縮小を検討している。システムを維持するランニングコストについても、約40%の企業が、現在契約中の運用保守サービスやサブスクリプションのコストを今後削減する見通しである。

 こうした中でガートナーは、外部委託コスト最適化を目指すITリーダーに対して、以下のフレームワークに沿って施策を講じることを推奨する。

  • 外部委託計画(A):行うべきプロジェクトとその優先度を決める。外部委託方針を決める
  • ベンダー選定(B):最適なパートナー(外部委託先)を選択する
  • 契約交渉(C):複雑性やリスクを排す。最適なコストで要件を満たすための交渉を行う

 以上の3点を実現することによって、外部委託コストを最適化する(図1)。

図1:外部委託コスト最適化のためのフレームワーク(出典:ガートナー ジャパン)図1:外部委託コスト最適化のためのフレームワーク(出典:ガートナー ジャパン)
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プロジェクトの優先度と外部委託方針を決める

 開発プロジェクトは、外部委託計画のフェーズで各プロジェクトの重要度を検証することで、優先度の高いもののみに支出を絞ることができる。さらに、ベンダー選定や契約交渉のフェーズにおいて、適切なコストの提案や契約条件をITベンダーから引き出すことが重要だ。運用保守サービスやサブスクリプションについても、利用の仕方や契約条件を改めて見直すための「契約交渉」を行うことで、コスト適正化を図る必要がある。

 外部委託計画については、ITコストの見直しは必要だが、リモートワーク推進のためのインフラ整備など、計画外のITコストが発生する企業も少なくない。今後の開発プロジェクトは適切な基準に沿って、再度優先順位付けを行う必要がある。

 ガートナーは、プロジェクトの種類を「売り上げ増やコスト削減に結び付けやすいプロジェクト」と「金額的効果に結び付けにくいリスク軽減のためのプロジェクト」の2つに分けて検討することを推奨している。前者については、ガートナーが作成している「ビジネス価値ツリー」を利用し、優先順位を決めることができる。後者については、「リスク評価マトリクス」を用い、リスクが起こる可能性とリスクが起こったときの影響度から優先度を評価できる。

 さらに、ITサービス調達のための選択肢、すなわち「ソーシングオプション」として、「リモート型の開発」、「クラウド開発基盤」、「標準的な開発フレームワークや自動化」を取り入れる必要もある。ガートナーは、これらに関する情報開示をベンダーに求めるべきだとしている。

適したパートナー(外部委託先)を選択する

 次に、策定した外部委託計画を実行するための最適なパートナーとなるベンダーを選定する。そのために、「開発プロジェクトの提案要請書(RFP)に、どういった項目を含めるべきか」を検討する必要がある。RFPには大きく以下の3つの観点を含める必要がある。

  1. プロジェクトの基本情報やサービス要件、ベンダーに期待する適性などの情報を開示する
  2. ベンダーが回答作成のためのスケジュールを適切に調整できるように、評価プロセスや価格の提示方法をあらかじめ開示する
  3. 各ベンダーから公平で同じ粒度の提案を引き出すために、共通の回答テンプレートを開示する

 回答テンプレートには、価格、スケジュール、体制、管理方法、提供形態、成果物、提案する製品/サービス、セキュリティ管理ポリシーなどの項目が含まれる。各社の提案を比較・検証しやすくするために、特に「価格」、「スケジュール」、「体制」については、あらかじめ提案の粒度を指定すべきである。

契約交渉では、複雑性やリスクを排除する

 開発プロジェクトを厳選し、適切なRFPで最適な委託先を選択したとしても、その後の契約交渉が不調に終わればコスト最適化は望めない。RFPで提示された価格、スケジュール、体制の詳細を議論するとともに、具体的な成果物を詰める必要もある。

 運用保守/サブスクリプションの契約交渉に関しては、現在の状況に鑑みて、無駄なコストの発生源を改めて絶つ必要がある。そのために、社内の利用状況の棚卸しや、現在使用していない「シェルフウェア」 の把握が求められる。

 運用保守サービスに関しては、直近の契約更新時に、委託範囲やサービス・レベル合意(SLA)を見直すことができる。加えて中長期的な対策として、AIやロボティクスなどを活用し、オンサイト人材の削減などを進めることも必要だ。保守サービスをサードパーティ保守に移行することも、コスト低減の選択肢になる。

 クラウドサービスのサブスクリプションは、完全従量課金が一般的なIaaSやPaaSでは、利用量の減少が即コスト低減につながる。契約期間が固定されることの多いSaaSについても、契約更新時に契約条件を再交渉する以外に、場合によっては契約期間中であっても不要/過剰なサービスの停止を交渉することも考えられる。

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