[技術解説]

SAS Viyaの“時間差戦略”と「アナリティクス×AI」がもたらすもの

2021年7月26日(月)鈴木 恭子(ITジャーナリスト)

「アナリティクスの民主化」を掲げて統計解析・分析に特化したソリューションを提供する米SAS Institute。近年はクラウドシフトの取り組みを加速させ、AWSやAzure、GCPをはじめとするクラウドプラットフォームから利用するSAS Viyaの機能や使い勝手を洗練させている。SASのエグゼクティブバイスプレジデントでCTO(最高技術責任者)を兼務するブライアン・ハリス(Bryan Harris)氏に、アナリティクスの民主化に向けてSASが今、どんなことに注力しているのかを聞いた。

Viyaの“時間差戦略”─Azure、AWS、GCP、OpenShiftを順次ネイティブ対応

 ここ数年、SAS Instituteはクラウドベンダーを標榜してその取り組みを加速させている。端緒は2020年6月に発表した、米マイクロソフトとのアナリティクス/AI分野での広範な提携で、Microsoft AzureをSASアナリティクス製品の推奨クラウドと位置づけた(関連記事Azure連携強化とコンテナベースの「Viya 4」─“分析の民主化”に向けたSASの取り組み)。

 2021年6月開催の年次プライベートイベント「SAS Global Forum 2021」では、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏がビデオメッセージを寄せ、同社とSASの強固なパートナーシップを強調している。ただし、推奨クラウドとはいえ、SASのクラウドがAzure一辺倒というわけではなく、その後、AWS(Amazon Web Services)、GCP(Google Cloud Platform)の両IaaSへの対応もはたしている。そして、2021年後半には、コンテナ/マイクロサービスアプリケーション基盤として支持を集める「Red Hat OpenShift」もネイティブサポートの対象に追加する計画だ。

 こうしてSASは、ネイティブサポート先のクラウドを段階的に拡大している。この“時間差戦略”について、SASのエグゼクティブバイスプレジデント兼CTOのブライアン・ハリス氏(写真1)は、「それぞれのクラウドでSAS Viyaの動作検証を実施し、技術的な課題を最小限にするためだった」と説明する。

写真1:米SAS Institute エグゼクティブバイスプレジデント兼CTOのブライアン・ハリス氏

 SASのクラウド型データ分析/AIプラットフォームである「SAS Viya」は、2020年6月にアーキテクチャを刷新し、Kubernetesベースのコンテナ/マイクロサービス技術を全面的に採用している。SAS Viyaがクラウド上で期待どおりのパフォーマンスを発揮するには、クラウドネイティブ技術を用いる必要があったからだ。

 ハリス氏は、「SASは当初、戦略的パートナーであるAzureを優先して技術的な課題を検証/解決し、そこからAWSとGCPにも拡大することが最善だと判断した」と説明する。Red Hat OpenShiftのサポートを2021後半にしたのも、技術的な課題を潰すためだとし、以下のように語る。

 「SAS Viyaをクラウド上で稼働させるには、個々のクラウドでチューニングする必要があるが、それぞれのクラウドでチューニングポイントは異なる。これまで多くのSASユーザーはオンプレミスでアナリティクスを実行していた。顧客がオンプレミスからクラウドに移行する際には、少なくとも既存のオンプレミス環境と同等のパフォーマンスを期待する。我々の使命は、顧客がどのクラウドを選択したとしても、パフォーマンスとコストのバランスで、既存環境以上の価値を提供することだ」(ハリス氏)。

 ネイティブサポートの拡大で、日本の市場獲得に弾みがつくことも期待している。日本企業で最も多く利用されているパブリッククラウドはAWSである。市場調査会社のMM総研が2020年6月に公開した日本国内におけるクラウドサービス市場動向によると、AWSの利用率は51.9%でトップ。次いでAzureが30.8%でGCPが13.9%だった(関連リンク)。ハリス氏は次のように語る。

 「もし、顧客がどのクラウドに移行すべきか決断していないのであれば、当社としてはまずAzureを推奨することになる。ただし、AWSには多くの需要があると期待している。そこで顧客に選択肢を用意して、(顧客自身が)自社の目的にあった最適なクラウドを決められる環境を構築するのが我々の役目だと考えている」

 なお、Red Hat OpenShiftのサポートについては、「企業がハイブリッドクラウド戦略を執るうえで、Red Hat OpenShiftが利用できるメリットは大きい」(同氏)としている。

●Next:「アナリティクス×AI」が企業にもたらすものは?

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