[イベントレポート]

Azure連携強化とコンテナベースの「Viya 4」─“分析の民主化”に向けたSASの取り組み

2020年7月29日(水)鈴木 恭子(ITジャーナリスト)

1976年の創業以来、統計解析/アナリティクス製品を提供し続けてきた米SAS Institute。データ分析専業の独立系ソフトウェアベンダーであり続ける経営方針はそのままに、近年は「アナリティクスの民主化」を掲げてパートナーとの協業やオープンなエコシステムの強化にも注力している。2020年6月16日開催のオンラインコンファレンス「SAS Global Forum 2020」では、マイクロソフトとの連携強化の内容や、アナリティクス/AIプラットフォーム「SAS Viya」の最新バージョンの特徴が紹介された。

Microsoft 365でもSASアナリティクスを

 現在のSAS Instituteが目指すのは「アナリティクスの民主化」。顧客がアナリティクスを駆使して業務変革や新たなビジネス価値を創出する顧客の活動を支援すべく、だれもが容易に利用できるアナリティクスツールの提供に取り組んでいる。それを具現化すべくSASは、AI(人工知能)やマシンラーニング(機械学習)の研究・開発に、2019年から2011年の3年間で10億ドルを投資する戦略を打ち出した。

画面1:コロナ禍の中、オンラインで開催された今年のSAS Global Forum(https://www.sas.com/en_us/events/sas-global-forum.html)。例年、世界60カ国から6000人超が参加する大規模イベントで、今回はオンライン開催が奏功し参加者数は1万5000人を超えたという。写真の人物はSASの創設者でCEOのジム・グッドナイト(Jim Goodnight)氏
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 SAS Global Forum 2020(画面1)のステージに立った、SAS COO(最高執行責任者)兼CTO(最高技術責任者)のオリバー・シャベンバーガー(Oliver Schabenberger)氏(写真1)は、同社が掲げる「アナリティクス3原則」として、「データのあるところにアナリティクスあり」「アナリティクスの民主化」「アルゴリズムを超えたアナリティクス」を挙げた。

写真1:米SAS Institute COO兼CTOのオリバー・シャベンバーガー氏

 今回のイベントでSASは、アナリティクス/AI分野におけるマイクロソフトとの提携を発表した。具体的には、「Microsoft Azure」をSAS Cloudの推奨クラウドプロバイダーとし、SASのアナリティクス製品や業界特化型ソリューションのAzureへの移行を促す。2020年9月にリリース予定のアナリティクス/AIプラットフォーム新バージョン「SAS Viya 4」も、最初は「Azure Marketplace」から提供するという。シャベンバーガー氏は「マイクロソフトとの提携は、ユーザーにとってアナリティクスの敷居を下げるもの」として、これがアナリティクスの民主化を加速させていくと強調した。

 世界中の多数のユーザーがマイクロソフト製品を利用している実態を見れば、今回の提携でSASがアナリティクスの裾野が広がることを期待するのは当然だろう。オフィスアプリケーションの「Microsoft 365(旧Office 365)」やSFA/CRMの「Microsoft Dynamics 365」、ローコード開発ツールの「Power Platform」といった新世代のクラウドソリューションで製品レベルでの統合が進めば、「アナリティクスが当たり前のプロセスになる」(SAS)からだ。

 さらに、SASが有する医療、金融、小売、流通といった業界特化型の分析ソリューションや専門知識をマイクロソフトの顧客に提供し、デジタルマーケティングやデータ管理などクラウドベースのサービスやインフラでも協業していくという。

 AzureをSAS Cloudの推奨クラウドプロバイダーとしたことについてSASは、「エンタープライズ市場でのAzureの優位性」を挙げる。クラウドのデータベースが多様化している状況では、どのクラウドとの接続性を優先するかを決める必要があり、「優先順位がもっとも高かったのがAzureだった」(SAS)という。なお、「Google Cloud Platform(GCP)」「AWS」など、Azure以外のクラウドプラットフォームにも順次対応していく計画だ。

●Next:Viya 4がまもなく登場、CI/CDプロセスの恩恵は?

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