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大日本印刷、組み合わせ最適化問題を高速で解く「DNPアニーリング・ソフトウェア」を開発

2021年10月27日(水)IT Leaders編集部

大日本印刷(DNP)は2021年10月26日、「DNPアニーリング・ソフトウェア」を開発したと発表した。膨大な選択肢から最適な解を抽出する「組み合わせ最適化問題」を高速で処理する。GPUを搭載した通常のPCで利用できる。生産や人員計画の最適化などを高速で解き、企業や社会の課題解決に活用できるとしている。今後、同ソフトウェアを自社内で活用するほか、企業・団体などからのデータ処理を受託する。2022年度内に同ソフトウェアを販売するなどの事業化も目指す。

 大日本印刷(DNP)の「DNPアニーリング・ソフトウェア」は、膨大な選択肢から最適な解を抽出する「組み合わせ最適化問題」を高速で解くソフトウェアである。工場の生産計画や人員計画の最適化、物流や運送便の経路の最適化、複数エリアでの最適なセールス経路の決定など、社会生活や企業活動で直面する多様な「組み合わせ問題」の処理に利用できる。同ソフトウェアが処理可能な問題の規模は4万変数までで、変数間の結合グラフは全結合である(図1)。

図1:DNPアニーリング・ソフトウェアの概要(出典:大日本印刷)図1:DNPアニーリング・ソフトウェアの概要(出典:大日本印刷)
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 DNPアニーリング・ソフトウェアは、量子現象に着想を得たデジタル回路を用いる量子インスパイアード技術に分類される。同ソフトウェアは、量子コンピュータやスーパーコンピュータを使う必要はなく、GPUを搭載した通常のPCで利用することができる。

 開発にあたっては、DNPが印刷事業で得た文字・画像処理や自然言語処理の技術・ノウハウを投入している。アルゴリズムが異なる3つの演算手法(シミュレーテッドアニーリング、パラレルテンパリング、量子モンテカルロ)を実装しており、課題に応じて手法を使い分ける。3つの手法を同時に用いて最適解を求めることもできる。

 入力データの整備や要求事項の調整作業など付随する機能・サービスも提供する。前提として、組み合わせ最適化問題の演算処理には、入力する分析データの整備や、導き出した解に基づいて最適化していく各種システムやアプリケーションとの調整作業などが必要になる。DNPは、こうした一連の作業について支援するAI技術やコンサルティングなども提供する。

 DNPはすでに、同ソフトウェアを自社事業の印刷工程予定の自動作成に活用している。従来の方法と比べて約10倍の高速化を図れたとしている。「夕方から翌朝にかけて時間がかかっていた印刷工程の予定表作成を約1時間に短縮でき、急な予定変更にも対応が可能になった」(同社)という。

 今後は、顧客企業などから受領したデータを基に、同ソフトウェアを使った組み合わせ最適化問題の解決業務を受託する。将来的には、同ソフトウェアを企業などに販売していく予定である。需要に応じた生産予測が必要な製造業、配達業務の所用時間最小化を図る物流・交通分野、素材・材料の研究・開発の分野などを想定している。

 開発の背景について同社は、より複雑で大量のデータを高速に処理するニーズの増加を挙げている。「特に、交通の渋滞解消や経路最適化、企業の生産計画や人員配置の最適化、投資のポートフォリオ分析といった課題に対しては、組み合わせ最適化が有効である。一方、専用コンピュータで組み合わせ最適化問題を解くやり方は、設備投資や人的負荷が必要になる。こうした課題に対し、GPU搭載の通常のPCで組み合わせ最適化問題を高速に解けるようにした」(同社)。

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