目の前で次々と起こる変化に対して、より良い手を打ち続けることのできる企業に競争力が宿る。そこでデータの高度な利活用が重要であることに異論を挟む余地はないが、データ分析の環境を整えるに留まらずに、どのような成果を上げたかを検証しつつ、組織自身が学んで成長していくことこそが肝要である。この文脈において、データのビジュアル分析プラットフォームの領域で頭角を表し、SalesforceグループとなったTableau(タブロー)がさらに市場で存在感を高めている。キーパーソンが「DDDM(Data Driven Decision Making」の重要性について語った。
将来を予測することの難しさにますます拍車がかかる昨今、事業環境の変化に追随するために企業に求められているのは、データを最大限に活用していく人材・風土(文化)の醸成とビジネス効果の追求である。
たとえば売上向上を具現化していくためには、より良い意思決定を「全社員が迅速に実行できる」ようにする必要がある。一部の人材や組織が取り組むだけでは自ずと限界があることをしっかり認識しておくべきだ。より多くの従業員がインサイトを発掘し、部門内で共有し、意思決定を実行するとともに、できる限り各部門や従業員自身に分析させることでインサイトの数そのものを増やすことを目指さなければならない。
1%の意識改善が確実にトップラインを向上
そしてこれを支えるのが従業員の働き方の向上と人材・風土の醸成だ。単純な繰り返し作業に費やされている人的リソースを解放し、“Not Harder”、“Work Smarter”を旗印に、IT部門やビジネスアナリスト、ナレッジワーカーの生産性を向上していく。
ここで、エンタープライズレベルのデータ&アナリティクスと従業員自身のセルフサービスによるデータ&アナリティクスを両輪とする「DDDM(Data Driven Decision Making」を提唱しているのがSalesforceだ。同社 Tableau カントリーマネージャーの佐藤豊氏は、「すべての従業員がこのDDDMに対して、わずか1%の改善意識を持つだけでもトップラインは確実に向上します」と説く。
拡大画像表示
具体的にDDDMをどうやって実践していくのか。佐藤氏によれば、そこには大きく3つの意思決定の方向性がある。
1つめは、経営判断やビジネス戦略、将来のサービスや製品開発、市場変化の察知、戦術の軌道修正を支えるマクロな意思決定。2つめは、ビジネスの成果や従業員の生産性、顧客満足度、収益などを日々のプロセスの中で把握しながら行動を起こすミクロな意思決定。そして3つめが、変化対応のための意思決定である。
生き物のように変化する事業環境に対応していくためには、起こった事象の原因をアドホックに深掘し、臨機応変なアクションを起こしたり新規プロセスをデザインしたりするほか、PDCA/OODAサイクルを通じて未知の事象に対応していく必要がある。「Tableauとして、この3つの意思決定を包括したビジュアル分析プラットフォームを提供しています」と佐藤氏は訴求する。
DDDM成功のために求められる5つのシフト
ただし単にプラットフォームを用意するだけで、DDDMを実現できるわけではない。「データを集めて可視化するステップまでは、現時点でもかなりの企業が実践できています。しかし、そこからインサイトを導き出して意思決定を行い、行動変容に結びつけられているかどうか。さらにその結果をしっかりトラッキングできているかと言うと、まだまだ物足りない状況にあるのが現実です」と佐藤氏は指摘する。
根本的な問題として、日本企業にはデータ&アナリティクスに対するリテラシーをもつ人材がまだまだ不足している。また、企業が保有するデータそのものは増えているが、すぐに使える形にはなっていない。「多くのシステムがサイロになっており、分断されたデータをつなぐために非常に多くの時間と手間を要しています。また、そうしたデータ準備がほぼ全面的にIT部門に委ねられており、ボトルネックとなっているケースも散見されます」と佐藤氏は語る。
上記のような課題を踏まえつつ、DDDMの成功のために起こさなければならない変化として佐藤氏が示すのが、「データ中心から成果主義へ」「完全なデータからキュレーションデータへ」「発生事象を捉えることから予兆を捉えることへ」「直線的なプロセスから継続的な学びの循環へ」「少数で大きな意思決定から最前線での意思決定へ」という5つのパラダイムシフトである。
拡大画像表示
そしてこの動きにあわせてSalesforceでは、アウトカムファーストの意思決定を支援していくとする。「これまでも例えばサプライチェーンからデータを集めることはできましたが、いざ現場でそのデータを使おうとしたときに、『リアルタイムに見えない』『何を意味しているのかわからない』といったギャップが発生していました。こうした外部データをビジネスアプリケーションに取り込んで企業内のデータと統合し、モバイル端末で可視化できるようにすれば、データ活用の民主化は一気に加速し、現場の人たちの行動様式を変えていきます」と佐藤氏は、その実現イメージを示す。
全社レベルのデータ活用を支えるTrusted Advisorへ
Tableauに軸足を置いたDDDMの強化ポイントをさらに掘り下げておこう。それは次の4つの方向に向けられている。
1つめはデータ管理で、全社レベルで使えるデータを増やすためにセルフサービス型のデータ準備を徹底的に進めていくとする。「インフラ側にいるデータエンジニアとビジネス側にいるデータスチュワードをつなぐ仕組みとしてデータカタログや集中型ガバナンスポリシーといった環境を整備することで、データ活用を促します」(佐藤氏)。
2つめはデータ活用のラストワンマイルとなるカスタムアプリケーション。「ノーコード/ローコードの開発ツールを使って、意思決定のプロセスをワークフローやアプリケーションに組み込んでいきます」と佐藤氏。
3つめはビジネスサイエンスで、データサイエンスの民主化を実現していく。これまで本格的なデータ分析を行うためには仮説-検証のサイクルを回す必要があり、高度なスキルが要求されるとともにインサイトを得るまでに長い時間を費やすこともあった。こうしたデータサイエンスとビジネスユーザーの間に存在している分析の壁を埋めるためにTableauが打ち出したのが、このビジネスサイエンスのコンセプトなのだ。「自動的な機械学習によってTableau自身が示唆を与えることで、ビジネスユーザーは従来よりも圧倒的に短い時間で得たいインサイトにたどり着くことができます」(佐藤氏)。
そして4つめがSalesforceとのシナジーである。同氏は「Tableauを使って例えばCustomer 360 プラットフォーム上で管理されているデータをその他のビジネスデータと統合するデータトランスフォーメーションを行うことで、顧客の可視性が高まり、より深い理解を得られるようになります。さらに各チームの従業員やマネージャー、経営陣に対して最新のカスタマイズされたデータのビューを提供し、質の高いデータコミュニケーション/データコラボレーションを実現していきます」と説明する。
拡大画像表示
ユーザー企業におけるこうした全社レベルのデータ活用を支えるTrusted Advisorとなることが、Salesforceの目指す姿なのだ。
具体的には経営コックピット/ダッシュボードの標準化、セルフサービス分析/部門共有、ビジネスサイエンス、ビジネスアプリケーションへの組み込みなどを図りつつ、すべての従業員が活用できるデータ分析基盤を構築する。一方で、中長期的なQuick Winの観点からデータ分析の定着化を協議するTableau Blueprintアセスメントを実施し、データドリブンな組織となるための文化を醸成していく。そうした中でも最重要領域として位置付けているのが人材育成であり、「ビジネスの革新を先導し、伴走するための社内人材育成への投資は必須です」と佐藤氏は説く。
拡大画像表示
Salesforceではビジネス部門のエンドユーザーからアナリスト、データサイエンティスト、開発者といった多様な人材に向けて、データリテラシーからデータ可視化、ビジュアル分析、データサイエンス、機械学習、組み込み分析、プラットフォームまで横断したスキルセットのラーニングパスを提供していくという。
●問い合わせ先
Tableau(Salesforceグループ)
URL: https://www.tableau.com/ja-jp
お問い合わせ先:https://www.tableau.com/ja-jp/about/contact