レッドハットは2022年4月12日、2022年度の事業戦略説明会を開催した。同社代表取締役社長 岡玄樹氏は「この1年でコロナ禍でのDX推進や組織能力としてのアジャイルに取り組むお客様の課題に対し、リアルにサポートすることができた。確かな手応えを感じている」と語り、2022年度もオープンソーステクノロジーを基盤に、顧客のDX推進を支えていく姿勢を示している。
国内企業のデジタル化とオープン化に注力
レッドハット代表取締役社長の岡玄樹氏(写真1)は説明会の冒頭、米国本社が発表した2021年度のグローバルビジネスが第1四半期から第4四半期まですべての四半期において前年比2ケタ成長を達成し、さらに、グローバルで2万人という日本を含めた大幅な人員拡大を行ったことを挙げ、2022年度もこの勢いを継続していくと明言している。
特に、2022年度の成長を加速させた存在が、今や「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」と並ぶフラグシップ製品となったコンテナプラットフォーム「Red Hat OpenShift」だ。2020年度に2800社だったグローバルの導入社数は、現在3800社まで急拡大し、国内でもNTT東日本、日立製作所、東京エレクトロンなどがOpenShiftユーザーとなっている(図1)。
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また、従来まではOpenShiftの導入は金融業界の企業が4~5割を占めていたが、ここ1、2年で製造業や流通、小売といった業界での導入も増加傾向にあり、広範な業種に支持されるようになっている。
こうして、グローバル/日本ともにレッドハットの事業が順調に展開されていることが示されたが、岡氏は「グローバルと日本の間にはDXの取り組みやオープンソースの活用において、まだ大きな格差がある」と指摘。同社が2022年にグローバルのCIOを対象に実施した調査によれば、7割近くの企業がデジタル主導でビジネスを展開しており、また、「オープンソースはクラウドをオープンすると確信している」「Kubernetesをすでに利用している」と回答したCIOがいずれも70%を超える結果になっている。
この調査結果について岡氏は、「残念ながら、日本企業の取り組みはまだそこまで成熟していないが、逆に我々の成長余地が大きいということでもある」として、2022年度も国内企業のデジタル化とオープン化に注力していく姿勢を見せている。
ハイブリッドクラウドやコンテナをより広範に届ける
2022年度のレッドハットの注力分野・施策として岡氏は、「ハイブリッドクラウドの領域拡大」「OpenShiftマネージドサービス」「組織文化・プロセス・スキル面でのアジャイル支援」を挙げている(図2)。それぞれ見ておこう。
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ハイブリッドクラウドの領域拡大
レッドハットは以前から、ハイブリッドクラウドこそがクラウド活用の主流となると提唱してきたが、実際、ここ数年はどの業界でも複数のクラウドやオンプレミス環境を使い分けるスタイルが一般的になりつつある。この流れを受けてレッドハットは、RHEL、OpenShift、構成管理・自動化の「Red Hat Ansible」といった同社の商用オープンソース製品のハイブリッドクラウド領域への適用を拡大している。
2022年度に特に注力するのが、5Gやエッジといったネットワーク基盤のクラウド化で、すでに通信業界に特化したチームを専門組織として独立化したり、大手製造業へのスマートファクトリー基盤提供などを扱うビジネス開発専門営業チームを設置するなど、特定の業界をサポートする体制の強化を図っている。また、DX推進の大きな鍵となる“自動化2.0”による運用変革も重要なテーマで、「Automation Adoption Journey」と名付けた成功モデルのパートナー展開を開始、幅広い顧客層への提案を加速していく。
ハイブリッドクラウドのインフラにRed Hatを導入した国内企業の事例としては、エンドユーザー向けISPサービス提供基盤「CirCUS」「MAPS」にAnsibleを導入し、1万機器以上の自動化を図ったNTTドコモや、OpenShiftによるクラウドコンテナ基盤の構築で外部事業者とのコラボレーションを進め、新たな顧客サービスを生み出す基盤とした三菱UFJ銀行などがある。2022年度はさらに適用範囲および業界を拡大し、データセンターからエッジ、スマートファクトリーに至るまで、同社のテクノロジースタックを幅広く浸透させていく方針だ。
OpenShiftマネージドサービス
今やRed Hatの成長をRHELと共に支える製品に成長したOpenShiftだが、グローバルと同様に国内市場においても大企業を中心にユースケースが拡大している。特に運用作業を委ねられるOpenShiftマネージドサービスへの関心はさまざまな業種で高く、2020年度と比較すると導入社数は5倍に増えているという(図3)。
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また、流通企業によるリアルタイムデータ連携基盤や、日立製作所のデジタルプラットフォーム「Lumada」のコンテナ管理基盤でOpenShiftが採用されるなど、ユースケースの多様化も進んでいる。
岡氏は、日本企業のこうした傾向から、OpenShiftに対するニーズとして「新しい活用のかたち」「導入の敷居をさらに低く」という2つが読み取れるとし、2022年度はこのニーズに基づいて、以下の施策を強化するとしている。
●新しいマネージドサービスの国内展開:リアルタイムデータ連携プラットフォーム「Red Hat OpenShift Streams for Apache Kafka」、データサイエンスプラットフォーム「Red Hat OpenShift Data Science」
●OpenShift関連製品の値下げ:基本機能を提供する「Red Hat OpenShift Kubernetes Engine」を33%値下げ、クラウドストレージ/データサービス群「Red Hat OpenShift Data Foundation」を40%値下げ
●運用基盤の拡大:「ARM on AWS」でAWS上でのARMアーキテクチャのサポート、エッジサポートの強化、オンプレミスの「Azure Stack Hub」へのOpenShiftのデプロイ
マネージドサービスによって開発と運用の負荷を軽減することでOpenShiftの新しいユースケースを作り出す。その一方で新規ユーザーがOpenShiftを導入しやすいよう、Kubernetesエンジンやストレージなど基本メニューの値下げを図り、より幅広いアーキテクチャをカバーしていく方針を明確にしている。
●Next:OSS企業として強みのアジャイル支援、第一生命のカルチャー変革
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