自動車メーカーのSUBARU(本社:東京都渋谷区)は、車両設計シミュレーションのための衝突解析・流体解析・3D可視化システムを、オンプレミス環境からクラウド(Oracle Cloud)に移行し、2022年5月に稼働を開始した。クラウドへの移行により、計算時間を約20%短縮している。日本オラクルが2022年5月18日に発表した。
SUBARUは、車両設計シミュレーションのための衝突解析・流体解析・3D可視化システムを、オンプレミス環境からクラウド(Oracle Cloud)に移行し、2022年5月に稼働開始した(画面1)。性能や品質の安定化を図りながら、計算時間を約20%短縮化し、開発コストを削減した。移行はアルゴグラフィクス(東京都中央区)の支援の下で実施した。
同社は従来、衝突安全性能と走行性能を高めるためのシミュレーションやテストを、オンプレミス環境で実行していた。高負荷のHPC(高性能コンピューティング)ワークロードであり、最大で数万コア規模のシステムで構成していた。今回、このシステムをクラウドに移行した。
クラウドへの移行によって、場所や電力などの物理環境要件やIT管理運用コストといった、オンプレミス環境におけるシステム拡張面での課題を解消した。また、大規模なシミュレーションを実行するために必要な計算能力を常に利用できる環境を実現した。必要なときに必要なリソースを迅速に拡張できるようにした。
Oracle Cloudのハードウェア面の特徴として、HPCコンピューティング用のベアメタルサーバーを利用できる。RDMA機能を備え、OSやネットワークのソフトウェアスタックをバイパスして低レンテンシで互いのメモリーに通信可能である。レイテンシは2マイクロ秒未満で、100Gbit/sの帯域幅を利用可能である。
また、ソフトウェア面では、アルテアエンジニアリング(Altair Engineering)製品など各種のHPCアプリケーションやフレームワークを利用できる。SURABUは、こうしたOracle Cloudの特徴を利用して、計算時に必要なノードを起動し、計算が終了したらノードを削除するという運用を採用し、リソースのコストを抑制している。
移行にあたってPoC(概念検証)を実施している。クラウド移行の課題や懸念事項を実機環境で確認・解消した。SURABUはPoCを通じて、Oracle Cloudに関するスキルも習得している。