常陽銀行(本店:茨城県水戸市)は2022年5月23日、入出金データを活用した「資金需要予測AIモデル」を構築し、実際の営業活動を通じて有効性の検証を開始したと発表した。過去の取引推移パターンから将来の資金需要を予測するAIモデルである。顧客の預金残高や入出金情報をAIに学習させて作成する。過去のデータで予測精度を確認できたことを受け、実際の営業活動における試行を開始した。検証は、NTTデータおよびJSOLと共同で実施する。効果検証期間は、2022年4月~同年8月を予定する。
常陽銀行は、顧客の入出金データから資金需要を予測するAIモデルを構築した。2022年4月から同年8月にかけて、実際の営業活動の中でAIモデルの有効性を検証している。過去のデータを使った検証で予測の精度を確認できたことを受け、実際の営業活動での試行を始めた(図1)。
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開発した資金需要予測AIモデルは、常陽銀行の法人取引先における膨大な入出金データを学習して作成した。過去の取引推移パターンから、将来の資金需要を予測するAIモデルである。AIを活用することで、経験に基づく人の判断では気が付かない変化を検知できるようになる(図2)。
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ベース技術として、入出金の動きをAIで分析することによって取引先企業の業況変化を検知するクラウドサービス「FinCast」(JSOLが提供)を利用する。決算報告よりも早い段階で業績の変化に気づけるほか、人の判断やルールベースでは気付かない変化も検知可能である。
検証では、予測モデルが出力した予測結果を実際の営業提案活動に活用する。予測と実際の融資結果を比較し、定量的な効果を検証する。さらに、営業担当者へのアンケートによって定性的な効果を調査・確認する。
常陽銀行は、取り組みの背景として、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や資源価格の高騰など、顧客をとりまく環境が大きく変化していることを挙げる。「多くの法人顧客にとって、資金繰りの安定化が重要な経営課題になっている。常陽銀行は、今回の予測モデルの活用によって、顧客の資金調達ニーズを早期に把握し、タイムリーな資金支援につなげるなど、営業活動の高度化に取り組む」(同行)。