[市場動向]
セイコーソリューションズ、精度数十ピコ秒レベルの自律分散型時刻同期システムを研究開発
2022年9月14日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)
セイコーソリューションズは2022年9月13日、現状のNTPなどのマスタークロック型の時刻同期システムよりも高精度な新しい時刻同期システムの研究開発を同年8月より開始したと発表した。小型の原子時計を搭載したコンピュータ同士が自律分散型で時刻を同期する。同研究は国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)などと共同で提案し、総務省の「周波数資源の有効活用に向けた高精度時刻同期基盤の研究開発」に採択された。
セイコーソリューションズは、現状のNTP(Network Time Protocol)などのマスタークロック型の時刻同期システムよりも高精度な新しい時刻同期システムの研究開発を開始した。有線モジュールに小型の原子時計を搭載したコンピュータ同士が自律分散型で時刻を同期する仕組みである(図1)。
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研究では、自律分散型の時刻同期に必要な、複数クロックとの時刻周波数比較機能を持つ小型原子時計を搭載した有線モジュールの実現方法を研究し、プロトタイプを開発する。同研究は国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)などと共同で提案し、総務省の「周波数資源の有効活用に向けた高精度時刻同期基盤の研究開発」に採択された(関連記事:NICT、光格子時計による標準時の生成に成功、UTCとの時刻差を10億分の5秒以内に)。
背景として、現在のITシステムは、NTPやPTPなどの時刻同期プロトコルを使っている。これらの時刻同期プロトコルは、上位にいる、より正確なマスタークロックに同期する仕組みをとっている。この仕組みの特性上、同期の精度を確保するには、高精度なマスタークロックが必要になる。
単一のマスタークロックに同期する仕組みには課題がある。例えば、GPSなどの衛星測位システム(GNSS)による時刻同期は、ネットワーク内に時刻を配信するマスタークロックがGNSSを受信できる環境でなければ使えない。マスタークロックに不具合が発生する可能性もある。
また、現在広く流通しているグランドマスタークロックは自前で原子時計を搭載しているが(例えば、同社の「TS-2950」と「TS-2952」はセシウム原子時計を内蔵)、PTPプロトコルの限界から、時刻同期精度はマイクロ秒程度と低くなってしまう。