[ユーザー事例]

鮮魚チェーンの角上魚類、市場での仕入れ・配送業務をアプリ導入で効率化

2022年11月2日(水)神 幸葉(IT Leaders編集部)

鮮魚専門チェーンの「角上魚類(かくじょうぎょるい)」を運営する角上魚類ホールディングス(本社所在地:新潟県長岡市、埼玉県さいたま市)が、モバイルアプリを活用して魚市場での仕入れ・配送業務の効率化に取り組んでいる。モバイルアプリは、モンスターラボが角上魚類の現場スタッフの声を採り入れながら開発を行った。2022年10月7日に両社が開催した共同発表会で、仕入れ・配送業務へのアプリ導入の経緯と効果を説明した。

部分最適や属人化に陥っていた仕入れ・配送現場

 角上魚類は、東京・豊洲市場と新潟・中央卸売市場のほか、本社を構える新潟・寺泊をはじめ地方漁協による市場でも仕入れを行う。その日のうちに関東・信越地域に展開する22店舗へ配送・販売し、新鮮で安い魚を消費者に届けている。そんな同社では、複数の市場で行われている仕入れや配送作業の現場で下記のような課題を抱えていた。

業務フローが整理されていないことによる部分最適の状態:豊洲、新潟の市場や買い付けを行う魚種により、手書きするセリ原票の記載方法が異なる。また、ファクス送信された手書きのセリ原票を商品事務スタッフが基幹システムに手入力する必要があった。

業務や知識の属人化:買い付け方法がスタッフ個々の経験などで異なる。また、スタッフは、担当したトラック積み込みを各自のスマートフォンで撮影するが、誤配送時には各担当がスマホから写真を探してミスを発見するというアナログな方法を取っていた。

 「バイヤーは、紙とペンと電卓が“三種の神器”と言えるくらい、なくてはならないものだった」(角上魚類ホールディングス 関東鮮魚課 課長の呉井宏之氏、写真1)。呉井氏は当時の状況を、「豊洲市場だけでバイヤーは年間約6000枚のセリ原票を書き、計算もアナログで行っていた。商品事務のスタッフはその原票を何時間もかけて基幹システムに手入力していた」と説明。魚市場の現場および事務スタッフにかかる負荷が大きかったという。

 こういった課題を抱え、また、ビジネスの拡大に伴い、角上魚類はデジタル/IT化の必要性を強く感じていた。そこで同社は、ITコンサルティング/ソフトウェア開発会社のモンスターラボに支援を仰ぎ、2021年3月より業務改善/業務デジタル化のプロジェクトがスタートした。

写真1:角上魚類ホールディングス 関東鮮魚課 課長の呉井宏之氏

現場スタッフの声を採り入れながらアプリをアジャイル開発

 角上魚類のプロジェクトは、モンスターラボのプロジェクトメンバーが3日間かけて魚市場の現場視察/ヒアリングを実施するところから開始した。業務のデジタル化に対して不安があった角上魚類の現場スタッフと直接対話をしながら、各市場で異なる買い付けフローを把握し、業務効率化が図れるポイントを検討。その後、モバイルアプリの設計・開発をアジャイル開発で進め、段階的に現場での試行運用を実施していった(図1)。

図1:角上魚類DX支援のスケジュール(出典:モンスターラボ)
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  上述した課題のうち、業務フローの整理については、バイヤーごとに異なる業務フローから統一可能な箇所を見つけて、手書きの業務をアプリで標準化・共通化した。業務や知識の属人化については、各バイヤーの買い付けや配送担当者の積み込み作業状況の写真などをリアルタイムでアプリ内に共有・閲覧可能にした(写真2)。

 こうして角上魚類の現場業務に即したアプリが完成し、活用へと移った。業務時間の削減、誤記入・誤配送などのミスを減らして業務の効率化を図れるようになった。また、データの蓄積による知見の平準化やペーパーレスの実現などの効果にもつながったという。

写真2:紙で行っていた作業をアプリに移行(出典:モンスターラボ)
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●Next:「現場業務のデジタル化」で注力すべきことは?

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