サッポロビールは2023年6月29日、ビールやRTD(Ready to Drink:開封してすぐに飲める缶アルコール飲料)の出荷における「AI需要予測システム」を同年7月1日に本稼働を開始すると発表した。これまでサプライチェーン担当者が手動で行っていた約4カ月先の需要予測をAIが補佐する。検証では予測精度が約20%上昇したのを確認した。AI予測モデル作成ツールとして「DataRobot」を採用し、システムは日鉄ソリューションズの支援を受けて開発した。
サッポロビールは、ビールやRTD(Ready to Drink:開封してすぐに飲める缶アルコール飲料)の出荷における「AI需要予測システム」を2023年7月1日に本稼働させる。これまでサプライチェーン担当者が人手で行っていた需要予測をAIが補佐する(図1)。事前に取り組んだ検証では、AIが協調することによって予測精度が上昇したため、本稼働を決めた。
サッポロビールによると、同社のサプライチェーン担当者は、例年の実績や直近の出荷実績、販促施策の状況など各種の要素を汲み取って、商品発売の約16週間前に需要予測を開始。その後も、受注状況や販売状況などを反映しながら出荷量を予測する。需要予測業務は、担当者の経験に依存する場面も多いことから属人化しやすく、担当者の固定化や技能伝承に課題があったという。
今回、これまで人が担っていた需要予測を、人とAIが協働する形にした。2022年10月にデータ分析やAIモデルの作成に着手し、2023年3月までの6カ月間で、ビールやRTDの限定品などを中心に、約40アイテムでAIの機能を検証した。検証開始当初、AIの予測精度は人に敵わなかったが、学習を重ねることで、検証終了時点では人だけの予測精度よりも精度が約20%上昇した。
短期間で精度の高い予測モデルを構築するため、AIモデルの作成を自動化するツール「DataRobot」を採用した。システム導入・構築は、SIベンダーの日鉄ソリューションズが担当し、約6カ月間でシステムを立ち上げた。
今回の取り組みは、需要予測をAIに任せるのではなく、AIを育成・運用することで、これまでの予測ノウハウを組織知として蓄積・継承しながら業務を高度化させることを狙っている。需給管理業務を高度化することは、サプライチェーン全体の計画・実行業務の高度化、データ主導型の意思決定、在庫やコスト構造の最適化に大きく寄与するとしている。