矢野経済研究所は2023年8月9日、国内外のM2M(Machine to Machine:機器間通信)市場を調査し、市場規模、セグメント別動向や将来展望を発表した。2022年度は事業者売上高ベースで前年度比9.5%増の2410億円と、ここ数年の低位推移から脱却した。
矢野経済研究所は、国内外のM2M(Machine to Machine:機器間通信)市場を調査し、市場規模、セグメント別動向や将来展望を発表した。同社はM2Mを人が介在せずに、主に携帯電話/PHS通信規格に準じた通信モジュールを内蔵したデバイス間で情報の送受を行うことと定義している。
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2022年度の国内M2M市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比9.5%増の2410億円と、ここ数年の低位推移から脱却し、2ケタ桁に近い増加となった(図1)。2020~2021年度について同社は「コロナ禍で企業業績の先行きが不透明になったこともあり、新規システム投資の保留やPoC案件がペンディングになるなどの影響が出た」としている。
「2022年度は、行動制限などの影響も減少し、コロナ禍以前の人手不足/省人化ニーズや省エネニーズの顕在化、さらには人が介在しない遠隔/リモート処理志向の高まりといった流れもあり、ビジネス環境が大きく好転した」(同社)
製造業でIoTの活用が進む
矢野経済研究所は、注目トピックの1つに製造業におけるIoTの活用が進んだことを挙げている。「製造業においては当初、省エネと製造現場の見える化に主眼が置かれていた。電力消費状況を把握して省エネに結び付けるような対応と、設備稼働率の向上に資する取り組みが主体だった」(同社)。
一方、2000年前後にM2Mが脚光を浴び、建設機械・重機や自動販売機、エレベータ、MFP(複合機)、医療機器、計測機器(産業計測、自然環境計測)などに適用されていったと説明。こうした機械では、製品や機器・装置にIoT的な通信仕様が組み込まれていったという。
「これを受けて、新設工場や新設ラインを持つ企業、省人化・省力化志向の強い企業、人手不足が深刻な企業などでは、生産現場でIoT活用が広がる状況になった。特に近年では、設備保全業務の高度化のためのIoT活用が拡大している」(同社)
M2M需要は2026年度まで10%前後の伸長が継続
M2M需要は引き続き旺盛で、2023年度の国内M2M市場規模は、前年度比12.9%増の2720億円を見込む。2026年度まで10%前後の伸長が継続する見通しである。「背景には、2025~2026年度頃に5G対応通信モジュールが登場し、画像系(カメラ)やコネクテッドカーなど新たな需要の喚起が期待できること、920MHz帯を使った通信ネットワークの登場による新たな適用領域の創出がなされることなどがある」(同社)。
需要分野別に見ると、エネルギー関連(スマートメーター、集中監視、リモート検針、遠隔制御など)、自動車関連(コネクテッドカーなど)といった既存の主力領域を中心に、設備・機器監視での遠隔モニタリングや機器・設備データ収集、次世代設備保全、物流やインフラ監視などの分野でも広がりを見せているという。「今後は、5G対応による画像系、画像データを使った医療分野やインフラ点検、防犯/防災といった領域への適用が期待できる」(同社)。