デロイト トーマツ グループは2024年4月2日、日本の上場企業におけるリスク管理(危機の発生を予防する施策)と危機管理(危機発生時の損害を最小化する施策)の実態について、2023年10月に実施した調査結果を発表した。国内で優先して着手すべきリスクの1位は「人材不足」で、回答者の47.7%が挙げた。2023年に経験した危機の1位は「人材・労務関連」で、前年の8%から9.5%に上昇している。
デロイト トーマツ グループは、日本企業のリスク管理(危機の発生を予防する施策)と危機管理(危機発生時の損害を最小化する施策)の実態を調査した。調査の対象は、日本国内に本社を構える上場企業のうち、売上の上位約3500社。2023年10月中旬~10月末にかけて、郵送によるアンケート形式で実施した(有効回答数は325社)。
国内で対策を優先すべきリスクは「人材不足」
国内で優先して着手すべきリスクの種類を、全55種類から選んでもらった。1位は「人材不足」(47.7%)、2位は「原材料・原油価格の高騰」(24%)、3位は「サイバー攻撃・ウイルス感染などによる情報漏えい」(23.7%)だった(表1)。
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人材不足が1位になった背景について同社は、デジタル人材などの継続的な不足に加え、特に小売り・流通において人材不足への懸念が昨年から15.7ポイント増加していること、物流の2024問題(2024年4月からドライバーの労働時間に上限を設定)の影響を挙げている。
昨年5位だった「サイバー攻撃・ウイルス感染などによる情報漏えい」が3位に上昇した。「テレワークが定着して社外から社内システムにアクセスするケースが増えてサイバー攻撃の被害件数が増加したことや、生成AIを悪用したサイバー攻撃の可能性などが背景にある」(同社)。
前回3位の「異常気象、大規模な自然災害」は4位へと順位を下げたが、災害リスクに対する企業の意識は引き続き高い。
海外拠点では地政学リスクも大きい
海外拠点において優先して着手すべきリスクの種類も聞いた。1位は「地政学リスク」(25.6%)、2位は「人材不足」(23.6%)、3位は「グループガバナンスの不全」(21%)だった(表2)。昨年8位の「サイバー攻撃・ウイルス感染等による情報漏えい」が今年は4位に上昇するなど、国際的なサイバー攻撃への懸念が見られた。
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