[新製品・サービス]

リコー、AIベンチャーの独natif.aiを買収、顧客のプロセスオートメーション支援を強化

DocuWareの「インテリジェントキャプチャ」機能を拡張してAI活用を促す

2024年5月21日(火)愛甲 峻(IT Leaders編集部)

プロセスオートメーションに向けて全社的な業務変革に取り組んでいるリコー。同社がITベンダーとして顧客企業に提供する製品・サービスにもその要素が色濃く表れている。同社は2024年4月22日、AIを活用した高精度なOCRや画像認識に強みを持つドイツのAIスタートアップ、natif.ai(ナティフエーアイ)の買収を発表。ドキュメント/プロセス管理サービス「DocuWare」にnatif.aiの技術を組み合わせることで、多様な文書や帳票からのデータ抽出を支援し、顧客企業の業務自動化や効率化を推し進める。説明会では、今回の買収の狙いや、顧客のプロセスオートメーション推進を支援する新サービスの機能などを説明した。

 リコーは2020年に「OA機器メーカーからデジタルサービスの会社への変革」を宣言。グループを挙げてデジタルトランスフォーメーションや業務プロセス変革に取り組んでいる(関連記事オペレーショナルエクセレンスを追求し、全社で取り組むリコーの「プロセスDX」)。

 取り組みは、もちろん同社内にとどまるものではない。リコーの製品・サービスとして、ワークプレイス領域でのデジタルサービスの展開を進めており、ドキュメント管理やワークフロー管理などのサービスを含む「プロセスオートメーション」と、コミュニケーションサービスに代表される「ワークプレイスエクスペリエンス」を成長領域に定めている。

 顧客、とりわけ同社が強みを持つ中堅・中小企業のワークフローのデジタル化に注力。紙文書のデジタル化や業務の自動化を通じて、付加価値の低い業務を削減し、生産性向上に貢献することを目指している。複合機やスキャナなどのOA機器やソフトウェアなどの自社開発に加えて、これまで独DocuWare(ドキュウェア)の買収や、サイボウズとの事業提携などにより、サービスのラインアップを拡充してきた(関連記事「リコーブランド版kintone」を提供へ─サイボウズとリコーの中小企業デジタル化支援)。

 今後は、デジタル化したワークフローにAIを掛け合わせることで、顧客の業務の「タスクゼロ」実現を支援する。データのインプットから意思決定に至るまでのプロセスをデジタルでつなげることで、新たな価値を創出するという(図1)。

図1:リコーのプロセスオートメーション領域の全体像(出典:リコー)
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業務デジタル化の阻害要因は非構造データ

 将来的な労働力不足が懸念される中、生産性の向上につながる業務のデジタル化は多くの企業にとっての課題だが、阻害要因も存在する。その1つが紙文書やPDFなどの非構造化データを構造化できていないことであると、同社 リコーデジタルサービスビジネスユニット デジタルサービス事業本部プロセスオートメーション事業センター所長の髙松太郎氏(写真1)は指摘する。

写真1:リコー リコーデジタルサービスビジネスユニット デジタルサービス事業本部プロセスオートメーション事業センター所長の髙松太郎氏(提供:リコー)

 髙松氏によれば、企業で扱われるデータの約90%は非構造化データが占め、業務プロセスの約70%が紙文書もしくは紙とデジタルのハイブリッドであるという。しかし、非構造化データからのデータ抽出は、技術的な制約や、手間やコストなどが原因で進んでおらず、非効率なマニュアル作業が常に存在する。

 髙松氏は具体的な業務課題の一例として、取引先とのやり取りに付随するさまざまな文書をシステムに連携させる際の作業を挙げた。現状では、見積書や請求書などのドキュメントは紙文書やPDFが中心であり、内容確認やシステムへの入力といった作業のほとんどはマニュアルで行われている。また、物流業の配送プロセスでは、受注から運送を行い、請求に至るまでにさまざまな紙文書のシステムへの入力や印刷、整理といったマニュアル作業の繰り返しがあり、複雑なプロセスがシステム化されずに温存されているという。

 こうした非構造データにまつわるマニュアル作業を解消し、業務のデジタル化に貢献するのが、今回買収を発表したnatif.aiのサービスであるという。リコーは同社を、顧客のプロセスとデータをエンドツーエンドでつなげるための“ミッシングピース”と位置づける。

狙いは自動化可能な業務領域の拡大とAIの活用促進

 natif.aiは2019年創業のスタートアップで、独ザールブリュッケンに本社を置く。AI技術を活用した高精度のOCR(光学文字認識)技術や画像認識、文書解析や情報抽出といった「インテリジェントキャプチャ」に特化したソフトウェア(SaaS)を提供している。今回、リコーは2019年に子会社化したDocuWareを通じてnatif.aiの全株式を取得。買収価格は数十億円規模であるという。

 リコーは、同社が提供するコンテンツサービスプラットフォームの「DocuWare」にnatif.aiのインテリジェントキャプチャ技術を組み合わせることにより、機能の拡張を図る。DocuWareは多様な文書・データの取り込みや一元管理、決裁や承認などのワークフロー自動化などの機能を備える。世界45カ国で展開し、2023年度下期の時点で顧客数は1万8690社を数え、前年同期比111%で増加しているという。

 DocuWareの利用シーンは会計領域における請求書業務の自動化が中心だったが、機能増強により、さまざまな業務領域への利用拡大を見込む(図2)。従来のDocuWareは手書き文書に非対応で、データ抽出は帳票ごとにマニュアル学習が必要となるなどの機能制限があり、他の業務領域での利用は進んでいなかった。natif.aiのサービスは自動で複数の帳票の種類を認識・分類し、手書き文字に対応した高精度なOCR機能を備える。データの抽出には事前学習したAIモデルを利用できるほか、個別の環境に合わせた学習も可能であり、多様な文書や活用シーンに柔軟に対応する。

図2:DocuWareとnatif.aiの技術を連携することによる効果(出典:リコー)
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●Next:取引書類の突合作業がスキャンするだけで完了

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