[ユーザー事例]
オペレーショナルエクセレンスを追求し、全社で取り組むリコーの「プロセスDX」
2023年7月24日(月)神 幸葉(IT Leaders編集部)
OAメーカーからデジタルサービス企業へ──リコーのデジタルトランスフォーメーション(DX)のコンセプトの中心にあるのがオペレーショナルエクセレンス、すなわち、業務運用を徹底的に磨き上げることで、競争優位を確立するアクションだという。そこでは、社内のあらゆる業務プロセスを可視化しながら最適化を図る「プロセスDX」が取り組まれている。同社は2023年7月5日、説明会を開いてビジョンと取り組みの経緯を紹介した。
全社/全員参加で取り組むプロセスDX
リコーは、1977年にOA(オフィスオートメーション)という言葉を提唱し、機械にできることは機械に任せて、人はより創造的な仕事を行えるような製品・サービスの提供に長年注力してきた。2020年にはデジタルサービス企業への変革を宣言し、2036年に迎える創業100周年に向けて、「“はたらく”に歓びを」というコーポレートスローガンの下、DXの取り組みを加速させている。
まずは自社で実践。リコーは、デジタルとデータを駆使した全員参加型の「プロセスDX」を打ち出した。社内のあらゆる業務のプロセスを可視化し、さまざまなITを活用して最適化を図る取り組みである(図1)。
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リコーのプロセスDX推進を先導するのは、グループ本部プロフェッショナルサービス部のワークフロー革新センターだ。CoEとして、プロセスDXの実践を社内のビジネス部門、そして顧客へと展開する役を担っている。
リコー コーポレート執行役員 プロフェッショナルサービス部 部長の西宮一雄氏(写真1)は、プロセスDXについて次のように説明した。「デジタル化というとローコード、RPA、AIなどに注目が集まりがちだが、当社はプロセスの可視化、最適化、デジタル化の3つを軸に、全社/全員参加型でプロセスDXの展開を進めていく」
全員参加型でDXを進めていくために人材育成にも力を入れる。目指す人材像は、社内でプロセスDXを推進できる人材と、顧客のプロセスDXを支援できる人材だ。社内のプロセスDX推進人材には、ブロンズ、シルバー、ゴール、プラチナという4段階の認定を設けている。2025年までに社内全体の40%を「並行でプロセスDXの自律的な実践」を行えるプロセスDXシルバーステージ認定者に育成する目標を掲げている(図2)。
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プロセスDX実現のための4つのポイント
続いて、リコー プロフェッショナルサービス部ワークフロー革新センター所長の浅香孝司氏(写真2)が、プロセスDXで目指す4つのポイントを説明した。
●現場の困りごとの自己解決:現場の困り事を要は最も理解し、解決のアイデアを持つのは現場。バックオフィスはもちろん、開発・精算現場でも自らデジタル活用したプロセス改革をグローバルで実践する。
●3M(面倒・マンネリ・ミスできない)の撲滅:製造業の現場で長年言われてきた3K(きつい、危険、汚い)は、機械化で解決が進んだ。同社ではオフィスワークのストレスを3Mと名付け、デジタルを使って解決を図り、生産性向上につなげる。
●プロセスDX実践の“型”の整備と実践スキルの体系化:定型的に実践でき、定量的に結果が出せる“型”の整備と実践スキルの体系化する。
●社内実践を進め、顧客の価値提供につなげる:社内で培ったプロセス改革実践ノウハウ、スキルを、リコーの販売会社であるリコージャパンと共に顧客に提供する。
ワークフロー革新センターは、これらのポイントとオペレーショナルエクセレンスの実現に向け、3つの方向から現場での自律的なプロセスDXを支援する(図3)。
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新しい仕事の仕方実践では、社員が使いこなせていないシステムについて、その使い方を革新センター内で検証する。例えば、周りには聞きづらいレベルの疑問を解消するためのコンテンツ作りや、より高度な使い方の提案などを行い、社内の生産性向上につなげようとしている。
また、データの活用推進として、経営・事業の意思決定支援につながるような資産情報の管理・分析を担う。特にマスターデータやデータ活用基盤の整備などデータマネジメントに注力し、データサイエンティストなどの専門職だけでなく、一般社員誰でもデータを活用し、業務に生かせる環境づくりを行っている。
浅香氏は、プロセスDXが組織変革のカギであるとして次のように説明した。「“とにかくデジタル化”ではなく、3Mを撲滅しようという取り組みを進めるにあたっては最適な技術が必要。まずは業務全体のプロセスの可視化・最適化が不可欠と考えた。最適化したプロセスにデジタル技術を適用し、そこから得た価値ある情報を活用できるようにする。こうしたサイクルを回している」(図4)
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浅香氏は、「ハイパーオートメーション(Hyperautomation)」へのチャレンジについても言及した。業務プロセスの可視化を進める中で、従業員個々人の作業のバラつきやイレギュラーな作業といった、従来、平面的に捉えていた課題も浮き彫りになったという。 可能にしたのは、RPAによる業務自動化の延長で取り組んだプロセスマイニングの成果だ。「見えないものが見えるようになり、課題抽出力が上がった。この取り組みを重ねてハイパーオートメーションを目指していく」とした。
●Next:リコーのプロセスDXを加速させる仕掛けと、事業部における実践成果
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