ライオン(本社:東京都台東区)は2024年6月3日、衣料用粉末洗剤の生産技術領域において、国内熟練技術者の暗黙知を生成AIで形式知化する取り組みをNTTデータの協力を得て着手すると発表した。文章化されていない暗黙知を「勘所集」として文書化するとともに、検索サービス「知識伝承AIシステム」を介して熟練者の技術や知識・ノウハウを検索・活用できるようにする。
ライオンは、衣料用粉末洗剤の生産技術領域において、国内熟練技術者の暗黙知を生成AIで形式知化する取り組みを2024年6月に始める(図1)。文章化されていない暗黙知を「勘所集」として文書化するとともに、検索サービス「知識伝承AIシステム」を介して熟練者の技術や知識・ノウハウを検索・活用できるようにする。NTTデータとともに取り組む。
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「昨今、少子高齢化、労働力人口減少により、熟練技術者の技術継承や人材確保が困難になりつつある。熟練者が持つ業務知識を効率的かつスピーディーに伝承する仕組みが必要になっている」(ライオン)。こうした中で同社は、アジアでの需要が堅調で、製造プロセスの開発において熟練者の暗黙知が必要な「衣料用粉末洗剤」をテーマにAIの活用に取り組む。
ライオンはこれまで、社内のデータベースにある形式知化された情報を、効率的に集めて提供する技術を開発してきた。生産技術領域においては、熟練者の知識・技能を伝承するため、OJTやマニュアル・手順書を活用してきた。しかし、例えば「原料の性状などを考慮した運転条件を設定する」といった暗黙知を学ぶのに、時間を要していた。
今回の取り組みではまず、熟練者へのインタビューや幅広い社員間のワークショップから情報を収集し、暗黙知化している技術や知識・ノウハウなどを抽出して「勘所集」として文書化する。このうえで、ライオンが取り組んでいる生成AI検索サービス「知識伝承AIシステム」に「勘所集」を取り込み、熟練者のノウハウを検索可能な仕組みを構築する。さらに、抽出対象となる暗黙知の範囲を拡大するため、インタビュー結果をまとめる工程に生成AIを適用する。
勘所集を取り込んだ知識伝承AIシステムのユースケースとして同社は、「製造工程のおいて品質に影響する留意すべき事項」を検索する使い方や、「原料の性状などの諸条件を考慮した製造条件を設定するコツ」を伝承させる使い方などを挙げている。