[技術解説]

ビルOSが実現する“後付け”の施設/機器連携─大阪公立大学がスマートビルの権限制御と拡張性を実証

完成後が本番、アプリネイティブ思考で進化するスマートビルの作り方

2026年7月31日(金)鈴木 恭子(ITジャーナリスト)

清掃ロボットがセキュリティゲートの自動ドアを解錠して通り抜け、エレベーターに乗って指定された階へ移動する──。大阪公立大学では独自開発したビルOSを基盤に、設備やロボット、アプリケーションを連携させるスマートビル/スマートキャンパス実証を進めている。カギを握るのは、既存設備を生かしながら新たな機能を“後付け”できる拡張性と、それらを安全に動かすための権限制御だ。

 ビル全体をソフトウェアで制御するスマートビルディングの研究・開発が加速している。スマートビルとは、従来は設備ごとに独立していた空調や照明、扉やエレベーターの制御を単一の基盤「ビルOS」で一元管理し、アプリケーションから操作可能にした建物のことだ。

 ビルOSの基盤技術として、ビル施設の空調・照明・電力などのエネルギー使用量を可視化し、自動で調整・制御するBEMS(Building Energy Management System:ビル・エネルギー管理システム、ベムス)が長年研究されてきた。近年のIoTやAI技術の進化が、BEMSおよびビル施設全般の管理を司るビルOSのインテリジェント性を大きく向上させており、注目と期待が高まっている。

写真1:大阪公立大学 スマートエネルギー棟

 このスマートビル領域では産学官でさまざまなプロジェクトが進められている。今回紹介するのは、大阪公立大学のプロジェクトだ。大阪市立大学と大阪府立大学が統合して2022年4月に設立された、日本最大級の規模を誇る公立の総合大学である。

 その2022年度から、同大学においてスマートビル/スマートキャンパスプロジェクトが始動した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて、ビルOSの独自開発を進めている。

 プロジェクトの舞台となったのが、同大学のスマートエネルギー棟だ(写真1)。2025年2月に竣工した3階建て・延床約3000㎡の建物で、「ZEB Ready」の環境性能を持つ。ZEB Readyとは、再生可能エネルギーによる分を除いて、基準となる1次エネルギー消費量を50%以上削減した建物を指す。

 大阪公立大学は現在、スマートエネルギー棟を概念検証から小規模実証までを担うフィールドと位置づけ、スマートビル化によるデジタルソリューションの創出や、エネルギー管理システムを用いた新たな熱・電力融通ネットワークシステムなど、さまざまな施策に取り組んでいる。

 同大学で大学院情報学研究科長・教授、学長補佐(スマートユニバーシティ担当)を務める阿多信吾氏(写真2)は、スマートビルの基盤について次のように説明する。

 「以前のビルは完成直後が最新で、作ったら終わりでした。しかし、ビルOSがビルの機能を管理し、ソフトウェアを更新していけば、建物自体は変わらなくても、機能は継続的にアップデートできます。課題が出てきたら、つどアプリケーションで解決する。私はこれを『アプリネイティブ思考』と呼んでいます」

 アプリネイティブ思考に基づき、まず、ビル自体をソフトウェアで機能を足していける土台にする。そうした仕組みを複数の建物に広げ、建物同士を連携させることで、スマートキャンパスになり、さらに拡大すればスマートシティになる──そんな考え方がスマートビルの根底にあるという。

写真2:大阪公立大学 大学院情報学研究科長・教授 学長補佐(スマートユニバーシティ担当)の阿多信吾氏

●Next:PCに周辺機器をつなぐように拡張できる建物

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