[市場動向]

医療データを秘密分散で安全に転送─医療AIプラットフォーム技術研究組合とZenmuTechが共同事業

患者データを遠隔地のAIサーバーに転送して分析

2026年9月2日(水)IT Leaders編集部、日川 佳三

医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)とZenmuTechは2026年9月1日、医療機関の患者データといった機密情報をネットワーク経由で安全に転送するセキュリティ事業を開始した。通信データを複数の分散片に分割・無意味化し、それぞれを複数のTLS通信経路で送信し、受け手側で復元する「秘密分散プロキシ技術」を利用する。通信経路上で一部の分散片が漏洩しても機密情報を守れるようにする。

 医療AIプラットフォーム技術研究組合(HAIP)は、2021年4月に設立された非営利共益法人である。医療AIサービスの普及と発展を目指し、業界共通の基盤技術を研究・開発している。「AI開発基盤」(リアルワールドデータを活用したAIモデルの作成支援)、「ラボ基盤」(第三者がAIの性能などを客観的に評価する仕組み)、「サービス事業基盤」(カタログサイトの運営、データ連携機能など)を提供している。

 そのHAIPとZenmuTechが、医療機関の患者データといった機密情報をネットワーク経由で安全に転送するセキュリティ事業を開始した。病院や診療所などに設置したPCから、患者の症状・カルテ・処方箋などのデータを遠隔地のAIサーバーに送信し、分析結果を返すという仕組みを共同で構築している(図1)。

図1:秘密分散プロキシ(3分散の場合)の利用イメージ(出典:医療AIプラットフォーム技術研究組合、ZenmuTech)
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 要素技術として、両者が共同開発した「秘密分散プロキシ技術」を利用する。ZenmuTechの秘密分散技術を応用した技術で、転送したいデータを複数の分散片に分割・無意味化し、それぞれを複数のTLS通信経路で送信し、受け手側で復元する仕組みを持つ。

 同技術を用いることで、送信側で通信データを複数の分散片に分割・無意味化し、それぞれを複数のTLS通信経路で送信したうえで、受信側において分散片を元の通信データに復元することが可能となる。これにより、通信途中で一部の分散片へ窃取・攻撃が発生した場合でも、個々の分散片から元の通信データが漏洩するリスクを低減する。

 典型的なシステムは、送信側PCにインストールするクライアントソフトウェアと、サーバーの手前で動くプロキシサーバーで構成する。クライアントソフトとプロキシサーバー間の通信に秘密分散を適用し、2つ以上のTLS暗号化通信経路を使って転送する。サーバーや送信側PCのアプリケーションは、間に秘密分散プロキシ技術が挟まっていることを意識することなく、アクセス透過型でデータを転送し合える。

 両者は、医療機関の情報セキュリティ対策に加え、病院・診療所・介護施設・薬局などを結ぶ地域医療連携ネットワークや、複数の施設間における医療情報の安全な通信・活用を支えるセキュリティ基盤としての活用を計画している。さらに、自治体、企業、研究機関など、医療機関と連携する幅広い分野への展開も検討している。

 HAIPは今後、ワーキンググループを組成し、医療機関、企業、研究機関などと横断的に連携しながら、秘密分散プロキシ技術を優先的に適用すべき領域や新たなユースケースの検討・実証を進める予定である。

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