[市場動向]

NTT、AIの応答をEQの観点で改善する技術を開発、公開EQテストのスコアが約23%向上

2026年10月27日(火)日川 佳三(IT Leaders編集部)

NTTは2026年10月27日、AIの応答をEQの観点で改善する「高EQ対話知性技術」を開発したと発表した。AIが利用者に過度に同調する「シコファンシー(Sycophancy:迎合、忖度)」を抑え、目先の満足だけでなく実生活での長期的な望ましさを考えて応答する。EQを測る公開テストでは、技術適用前よりスコアが約23%向上した。今後、スマートフォン向けチャットサービスへの実装に向けた実証実験を進める。

 NTTの「高EQ対話知性技術」は、AIの応答を感情的知能(EQ)の観点で改善する技術である。AIが利用者に過度に同調する「シコファンシー(Sycophancy:迎合、忖度)」を抑え、目先の満足だけでなく利用者の実生活における長期的な望ましさも考慮して応答する。

 例えば、利用者が「転職しようかな」とAIに話しかける(図1)。従来のAIは「それはいいですね! 次は、どんな仕事をしたいですか」と同調する。一方、EQを高めたAIは利用者の状況を踏まえ、「この前は仕事が楽しいと言ってたのに何かあったんですか」と転職のきっかけを確認する。

図1:「高EQ対話知性技術」適用前後での応答の違い(出典:NTT)
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 技術は、(1)高EQ発話最適化(EQの観点で応答内容と応答の仕方を最適化)、(2)物語(ナラティブ)型ユーザー情報表現(利用者と出来事の関係性や時間的つながりを利用者自身を主人公とした物語形式で記録)、(3)ハイコンテクスト対話(共通認識を踏まえて伝える情報量を調整)、の3つで構成する(図2)。

図2:「高EQ対話知性技術」を構成する3つの技術(出典:NTT)
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 (1)高EQ発話最適化では、AIに必要なEQ能力を4つの観点に整理した。「対話相手の背景を理解する力」「対話相手に寄り添う力」「理解した内容を応答に活かす力」「対話相手の社会的関係性を考慮する力」である。これらの観点でAIの発話内容を改善する学習技術により、相手の状況や背景を踏まえたEQの高い発話を生成する。

 EQを測る公開ベンチマーク「EQ-Bench3」を使い、技術適用前とスコアを比較した。発話内容の表面的な理解だけでは難しい、状況を理解する力や相手の立場を考えた課題解決の項目で、スコアが平均で約23%向上した。兄の婚約者が選んだ露出度の高いウェディングドレスを巡って親族間で衝突した場面では、技術適用前のAIは表面的に意見を肯定して問題を避けようとした。技術適用後のAIは、共感しつつ、より良い解決へと働きかけた。

 (2)物語型ユーザー情報表現は、利用者を理解するための土台となる情報を、利用者自身を主人公とする物語形式で記録する。発話から得た事実を羅列するのではなく、行間を推測しながら、利用者の背景やこれまでの経緯を補完する。

 例えば、「チームの主任に昇格した」「後輩の仕事のスピードが上がってきた」「チームで表彰を受けて喜びを感じた」という情報から、「主任としてチームの動機付けに取り組んだことで、後輩の仕事はますます速くなってきた。こうした日々の積み重ねでチームは表彰も受け、やりがいを感じている」という物語を作る。これにより、大規模言語モデル(LLM)が利用者の背景や出来事のつながりを文脈として参照しやすくなる。

 (3)ハイコンテクスト対話は、話し相手の背景や好みを考慮して伝える情報量を調整し、相手にとって自然で分かりやすい表現で伝える。相手が既に知っている情報の説明を省きながら意図が伝わる、簡潔で自然な対話を目指す。

 例えば、横須賀市で働いており横須賀に詳しい利用者からカレーの店を聞かれたAIは、定番の海軍カレーなどの説明を省き、今までにない新機軸のカレー店などを簡潔に紹介する。

 NTTは今後、スマートフォン向けチャットサービスへの社会実装に向けた実証実験を進める。

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