IPを知り尽くした総合ベンダーへ脱皮図る──。1984年の創業以来、130社以上の企業を買収してきた米シスコシステムズ。技術確保による機能拡充に徹しており、顧客ベースを狙った案件は皆無といっていいだろう。
業務アプリケーションなど、ユーザーの目に直接触れる製品で企業に切り込むのが正面からのアプローチと仮定すると、データセンターやマシンルームといった“裏”から企業システムのイニシアチブを握ろうというのが同社の戦略だ。
ネットワーク機器ベンダーとしての印象が強いシスコだが、今年3月には同社初のブレードサーバー「Unified Computing System」を発表。仮想環境における運用効率性の高さを訴求する。クラウド時代の到来を見据え、企業システムのインフラ周りをネットワーク技術を基軸にフルカバーしようというシナリオの一環だ。Topspin CommunicationsやNuova Systemsといった高機能スイッチベンダー、NeoPath NetworksやActona Technologiesなどのストレージ関連ベンダーを買収してきたのも、次世代のインフラに求められる要素技術を取り入れるためである。
一方で、そのインフラ上で提供するサービススタックについても拡充を進めている。同社は創業から蓄積してきたIP関連技術を応用して「Unified Communications」というコラボレーション製品群を提供している。その機能を強化するための買収が活発だ。Web会議のWebExや、インスタントメッセージングのJabberを傘下に収めたケースが代表例である。さらにVoD(ビデオオンデマンド)やSNSの分野にも対象を広げており、サービスベンダーとしての色彩も強めている。