社名とは裏腹に、大規模かつ複雑な業務ソフト群を擁する米マイクロソフト。OSのみならず、データベース、業務アプリケーションなど、企業情報システムを広範にカバーする。
コラボレーション、運用管理、セキュリティなど企業情報システムに必要とされる領域で製品追加や機能拡充を次々と実現する背景には、旬のベンチャー企業の計画的な買収がある。
「Microsoft」というブランドを生かした巧みなマーケティング戦略も手伝ってか、マイクロソフトが自社開発して投入したように見受けられる製品も、実は買収によって獲得したものであることも多い。例えばERPパッケージのDynamicsシリーズ。その大半は、第2次ERPブームが巻き起こった2000年代初頭に相次いで買収したGreat Plains Software、Navision Softwareが保有していた製品群だ。
現在も積極的に買収を進めるが、その方向性は「ソフトウェア+サービス」という同社の戦略に基づいている。今後のクラウドシフトを睨み、オンプレミス(自社導入)のシステムと、クラウドで提供するサービスを連携させたハイブリッド型の情報システム像を描き、そこに必要な要素技術を持つ企業を買収のターゲットとする。
デスクトップ/アプリケーション仮想化の分野を強化するため、Calista Technologiesを買収したのはその一例だ。企業が扱うデータ量が爆発的に増える中、オンプレミス/クラウドともにDB技術の強化が欠かせない。この点ではDWHアプライアンスのDATAllegro買収で獲得した技術をSQL Serverに統合することも解決策の1つとする。
企業システムとは直接の関係が薄いネット広告や検索エンジンを巡る話題が中心だが、直近では、米Yahoo!との提携が新しい。かつてはMSによる買収提案もあったが、結局は提携という形に落ち着いた格好だ。もちろんこれはネット業界の巨人Googleへの対抗軸形成に狙いがある。Googleはまだ企業向けシステムに本腰は入れていないものの、クラウドの分野では存在感を増しており不穏に映る。Googleの出方次第では、MSの買収戦略がさらに活発化すると見られる。