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富士通、クラウドから派生する新ビジネスに注力、専門組織を編成して業種別ノウハウを集約

2010年のクラウド戦略

2010年2月22日(月)折川 忠弘(IT Leaders編集部)

富士通は2009年12月21日、クラウド事業におけるこれまでの成果と、今後の取り組みについて説明会を開催した。業種や業務に特化したサービスの拡充と組織の整備を進め、新たなクラウドビジネスに対する地場を固める考えだ。

クラウド事業の現状

富士通は2009年4月にクラウドサービス「Trusted-Service Platform」を、同年10月に企業内クラウドの構築を支援する製品群を発表して、事業の足場固めを急いできた。「商談数は確実に増え、累計で800件を超えた」(サービスビジネス本部 本部長 常務理事 阿部孝明氏)。外資勢に押される印象が強いクラウド市場だが、この数字を見る限り、国内ベンダーも一定の手応えを得ていることが伺える。

まだ世間で実績の少ない“雲の上”のサービスだけに、その品質やセキュリティ対策、他システムとの連携といった問題を感じている企業は少なくない。こうした疑念に対し、「国産ベンダーとしての信頼性と、ネットワークやサーバーなどのインフラからアプリケーションまでトータルで提供できる総合力が強み。全方位で課題解決に取り組める」(阿部氏)と訴えかける。クラウドを活用したシステムで何らかの問題が起きた場合に、同社が一元的な窓口になって迅速に対応できる体制をあらためて強調した。

同社はクラウド市場について、2008年から2015年までに約16倍に成長し、IT市場全体の2割(約2.4兆円)を占めると予測。中でも成長株を企業内クラウドと見る。前述した800の案件中、まだ2割に満たない企業内クラウドに関わる案件を増やしていくことに当面の目標を置く。

オンプレミス(自社運用)からクラウドへのシフトが加速すれば、ハードウェアのビジネスが大きな影響を受けると考えられる。「データセンターにシステムが集約すれば、サーバーの販売が落ち込むことは確かにあり得る。しかし、膨れ上がるデータ量を支えるストレージ市場は成長が見込めるほか、業種や業務に特化した専用端末が今後増えていく」(同)との見解を示した。

今後の取り組み

クラウド環境と既存システムを連携させたシステムへの需要が高まると見て、3つの事業を整備し展開を強化する。(1)ミッションクリティカルで確実なデータ保全が求められる「バックオフィス系のインテグレーション」、(2)ユーザーの使い勝手向上やデータ活用などに配慮した「フロント系のインテグレーション」、(3)医療や交通といった社会インフラ向けの「広域系のインテグレーション」である。

特に広域系に注力する。「高画質な映像を配信する遠隔医療や、自動車の位置や速度情報を蓄積するプローブ交通情報などは膨大なデータを取り扱う。この点でリソースの柔軟性に富んだクラウド環境が向いている。クラウドビジネスの柱として、社会インフラ市場に大きな期待を寄せている」(システム生産技術本部 本部長 柴田徹氏)。

バックオフィス系やフロント系、広域系を連携する「ハイブリッドクラウド」も視野に入れる。ただし、「大規模なシステム連携や、業種に特化した専門的なサービスは富士通だけで完結できない」(柴田氏)とし、得意分野を持つパートナーとの協業でサービス強化に取り組む。状況に応じてセールスフォース・ドットコムやマイクロソフトなどのクラウドと連携し、顧客ニーズにきめ細かく応える姿勢を打ち出す。

専門組織の設置

各業種が求めるニーズを汲むべく、クラウド事業の専門組織として「クラウドアーキテクト室」と「クラウド実装・検証センター」を設置した。前者は富士通全グループから選抜した業種別の現場担当者を集め、個々の業種/業務のノウハウをクラウド構築のために集約する役割を果たす。後者はクラウドアーキテクト室で蓄積したノウハウをITインフラとして整備、具体的に利用できるようにする。両部署に携わる専任者は100人程度で、今後も人数を増やしていくという。 (折川忠弘)

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