日本で数多くのユーザーを擁し、しかも運用管理ツールやバックアップツールなど多彩な企業IT向け製品を持つ割に、骨太の製品戦略が見えにくいベンダーの1社が米CAだ。特に仮想化やクラウドの時代における製品戦略をどう考えているのか。2010年1月に会長兼CEOに就任したばかりのウィリアム・マクラッケン氏がこのほど来日。3月4日に率直な質問をぶつけてみた。(聞き手は本誌編集長、田口 潤)
■ITの世界で今何が起きていて、どの方向に向かおうとしていると認識しているか。
ここ数カ月、社内外の人々と事あるごとにその議論を重ねてきた。そうした席で話題となるのは、やはりクラウドの流れである。個人的意見としては、クラウドのうねりは一過性のものではなく“本物”だと考えている。これまで、IBMを中心に45年もの間、IT業界に身を置いてきた。メインフレームからオープンシステムへ、そしてインターネットの隆盛など、数々の変化を肌身で感じてきており、その経験を踏まえた見解でもある。
■もう少し、直接的な理由を挙げるとしたら?
経済的視点に立てば、昨今の景気後退は、限られたコストで生産性を高めるにはどうすべきかという課題を企業や政府に突きつけた。それは、自前主義を貫く姿勢を疑問視することにつながった。一方で技術的な面を見れば、仮想化やネットワーク、運用管理などの要素技術が格段に進歩し、何十年も夢に描いてきた「必要な時に必要なだけITリソースを使う」という環境が現実味を帯びてきた。これらの動きが同時期に起こり、クラウドに寄せる期待が一気に高まったわけだ。
かつて、大企業においては、開発案件のバックログを7年分も積み残しているという話がざらにあった。そんな状況で企業がビジネス環境の変化に即応できないのは自明である。今、ITの世界は大きな転機を迎えている。経営者がビジネスを変えたいと考えた時、18カ月でもなく、6週間でもなく、ただちに行動を起こせる時代が到来している。とりもなおさずクラウドあればこその話だ。
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