サーバー統合や仮想化技術が浸透するにつれ、ストレージの役割が重みを増している。その結果、FC-SAN、NAS、iSCSIなどストレージのバリエーションが増え、選択が難しくなってきた。ユーザー企業にとっては、オンプレミスとプライベートクラウド、パブリッククラウド上のストレージの使い分けも、近い将来の課題になるはずだ。こうした中で、ストレージ大手の米EMCはどう考え、どんな手を打とうとしているのだろうか。来日したフランク・M.ハウク米EMCグローバルマーケティング&カスタマー品質担当上級副社長に聞いた。
-ハウクさんの担当の1つである「カスタマー品質」は耳慣れない言葉だ。具体的に何を行うのか。
ハウク:我々は、トータル・カスタマ・エクスピアリエンス(TCE)と呼ぶ活動を行っている。その一つが、顧客調査で、例えば顧客が製品を再度購入したり、追加購入したりしない理由を探るのが目的だ。
分かったのが、「単に顧客満足度が高いだけでは不十分」という事実だ。製品の善し悪しはもちろん、購入のためのプログラム、サポートスタッフの知識など、顧客が経験するあらゆることを、高めていかなければならない。
製品の品質を例にすると、顧客はほとんど壊れないものではなく、まったく壊れないものを求めている。そこで品質に関する高い目標を設定し、スタッフの報酬に連動させたり、表彰制度を通じて、品質をEMCのDNAに落とし込んできた。こうした活動を通じて、EMCの製造能力は、他社とは異なるレベルに達している。
-仮に品質が高いとしても、顧客が望むのはそれだけか?導入や設置の容易さ、価格の安さはどうか?
ハウク:確かにその通りだ。現在、我々は、導入の容易さに焦点を合わせて製品を開発しているし、すでに容易になっている。顧客の中に、EMCは高価で扱いが難しいという声があるとすれば、それは2000年頃の印象が残っているせいだろう。以前は、ユーザー企業のONNサイトでの開発が必要だったからだ。今では、ユーザー自身が構成を決め、導入し、パーツ交換もできるようになっている。
EMC製品は高価というイメージを払拭したい
-「EMC製品は高価」という意見に対しては?
ハウク:それはオールダーレピュテーション(昔の評判)だ。当初、Symmetrixのようなハイエンド製品を投入したので、そういうイメージがあるのかも知れない。だが過去数年間に40社以上の買収を行い、現在では5000ドルから数百万ドルまで非常に広いレンジの製品を提供している。
ご存じのようにEMCはパートナー経由のビジネスを行っており、彼らに販売してもらうには価格競争力の高い製品が必須。そして、そうしたプライシングを実施している。「EMC製品は高価」という人には、ぜひ現在のEMCを理解して欲しい。もちろんEMCとしても、そうしたレピュテーションを払拭しないといけない。
-話を変えて、プライベートクラウドについて聞きたい。シスコシステムズやVMWareと手を組み、VCEというグループを結成。VBlockという大規模サーバーを製品化した。その狙いは?
ハウク:VCEでは、サーバーとネットワーク、ストレージ、仮想化ソフトをあらかじめ組み合わせ、検証済み、かつ一定の価格で提供する。企業のデータセンターを高度化し、プライベートクラウドを構築できるようにし、そして運用コストを最小化する、とても重要なアプローチである。EMCの事業全体に占めるVCEの割合をどう見ているかに関してはノーコメントだが、3社のCEOは毎月1回、会合を持ち、事業の進捗状況や商談の状況などを確認している。3社にとって、それくらい重要だと考えて欲しい。 -EMCの事業におけるVCEの重要性は、どの程度のものか。
VCEという連合を組んでから5ヵ月しか経っていないので、その問に答えるのは難しい。しかし、これまでのところ、顧客からの問い合わせや商談は予想以上で、EMCにとっても重要な事業になる。
とはいえ、VBlockですべてをカバーできるわけではない。より小規模な構成のシステムを提供する必要があるし、VMWareの仮想化ソフトだけでなく、マイクロソフトのHyper-Vに対応する必要もある。
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