[イベントレポート]
SAPがオンデマンドに本格参戦、DB老舗買収でモバイルでも主導権を
2010年7月5日(月)力竹 尚子(IT Leaders編集部)
2010年の「SAP SAPPHIRE NOW」は、独フランクフルトと米オーランドでの同時開催という異例のスタイルだった。直前の5月14日に「SAP、サイベースを買収」というニュースが駆け巡ったこともあって同イベントへの注目度は高く、2会場合わせて1万5000人以上が来場している。
3日にわたるイベントの中心となったのは、SAPを率いるリーダーたちによる基調講演だ。現地フランクフルトでは、ジム・スナーベ共同CEOとビシャル・シッカCTOが講演した。一方、オーランド会場ではもう1人の共同CEOであるビル・マクダーモット氏、監査役会の議長を務めるハッソ・プラットナー氏が登壇。フランクフルトの来場者はスクリーン越しに拍手を送った。4人のリーダーが講演中に発信し続けたのは「オンプレミス、オンデマンド、オンデバイス」というメッセージである。以下では、各講演から浮かび上がったSAPの新戦略を見ていこう。
オンプレミス戦略
真のリアルタイム分析を可能に
まずは、企業がシステムを自社運営する「所有型」、つまりオンプレミス領域への取り組みである。ERPはもとより、データ分析やCRMシステムといったオンプレミスのアプリケーションは、SAPが最も得意とするところ。今回はこれを、独自のインメモリー技術で強化していくことを強調した。
インメモリーDBについては、技術トップであるシッカCTOが詳しく述べた。同社のインメモリーDBとは、一言で言えばデータのカラムを10分の1に圧縮してメモリー上に展開する技術のこと。ハードディスクへのアクセスが発生しないため、従来のRDBに比べてデータ処理のスピードが圧倒的に速まる。インメモリーDBを利用すれば、「例えばリアルタイムのトランザクションデータに基づく需要予測やシミュレーションといったアプリケーションをデスクトップ上で実行できる」(シッカCTO)。
同技術を実装した製品としては、2010年2月に分析ツールの「BusinessObjects Explorer, accelerated edition」を出荷済み。これに加えて、2010年内に「High-Performance Analytic Appliance」と呼ぶ分析アプライアンスをリリースするという。
インメモリーDBは、SAPの既存技術であるMAX-DBをベースに、ドイツのウォルドルフとベルリン、韓国ソウルの3拠点に散らばるチームが一体となって開発したという。共同創業者の1人であるプラットナー氏が、開発の様子を「まるでスタートアップ企業に戻ったようだった」と感慨深げに振り返ったのが印象的だった。
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