組織は、役割や責任、ワークスタイルの異なるさまざまな人によって構成されている。企業が生産性を向上するためには、各個人が必要な情報やアプリケーションにすぐにアクセスでき、メンバー同士が容易にコラボレーションしていく環境が必要である。前編では、IBMが推進する「Smart Work」(スマートな働き方)の考え方と、それを実現するソリューションであるリアルタイムコラボレーションやビデオ会議、オフィス構築などについて聞いた。後編ではさらに、自宅のPCやスマートフォンなど、あらゆる場所・端末からセキュアに利用可能なデスクトップ・クラウド・サービスと、クラウド時代の災害対策としてのバックアップ・ソリューションを紹介する。
クラウド時代のバックアップ・ソリューション
事業継続ソリューション・サービス担当部長
河部 正紀氏
1983年、日本IBMに入社。SE、ソリューションスペシャリストとして通信事業のお客様を担当。
2006年より、ITサービス事業部にてインフラ・ソリューションの企画・展開を担当し、これまでSOA/ITコンサルタントの立ち上げに従事。2009年より現職。
実行環境がデータセンター側に集約されるデスクトップ・クラウドは、災害時などにユーザー企業のオフィスが被災した場合やパンデミック時に他の拠点で業務を継続できるメリットもある。IBMでは、クライアント企業の被災というリスクに関して、データのバックアップ・ソリューションを提供している。同社の河部氏は「デスクトップ・クラウドは、手元の端末にデータが残らないので、逆にデータ管理の意識が薄まりがちになるのではないかと感じます。ですから、有事にデータをしっかり復旧できる対策が重要だと思います」と語る。
河部氏は、現状でバックアップのニーズは大きく分けて2種類あるという。ひとつは、デスクトップ・クラウド・サービスのバックアップ。もうひとつは、クラウド環境に集約されていないオフィスのPCやサーバーのデータのバックアップだ。「前者の場合、データセンターのクラウドサーバーにデータが蓄積されるため、データを保護するのはサーバー側です。これは特に新しい問題ではなく、弊社が長年金融や製造業の基幹システムにおけるバックアップ・システムの設計で培ってきた堅牢で確実な技術があります。災害時の停止時間を最小限に抑えるため、クラウドのバックアップを確保しています。ある金融会社のケースでは、IBMのバックアップセンターに基幹システムとデスクトップ・クラウドの両方のデータを常時バックアップしています」と河部氏。
後者のデスクトップ・クラウド環境に移行していないPCやオフィス内サーバーでデータを管理している環境の場合、バックアップは当然データセンターだけで完結しない。そこで、こうした環境でのバックアップとしてIBMが提供しているのが、IBMのクラウド・サービスのひとつであるインフォメーション保護サービスの『リモート・データ保護』だ。
このソリューションでは、バックアップが必要なPCやサーバーにエージェント・プログラムをインストールし、VPN接続したデータセンター側の領域にデータをバックアップする。バックアップしたい領域を指定すると、初回利用時のみフルイメージをバックアップし、以降は毎日指定の時間に差分データの自動バックアップを行う。専用の画面からバックアップデータを復旧させることも可能だ。
リモート・データ保護の特長について河部氏は「他社の場合、初期費用が必要なケースがありますが、弊社のバックアップサービスは、1GByteあたりの従量課金(最低50GByteより)だけですので、初期投資がなく始められます。また、従量課金といっても単純な容量の積み上げではないという点もメリットです」と話した。
バックアップというと、毎時、一日前、一週間前、毎月など、世代管理が必要になるケースもある。最新のバックアップが必ずしも正しいデータでない場合があるため、有事の被害を最小限におさえるため数世代分のデータを必要とするケースは多い。河部氏によると、競合他社のバックアップの場合、世代管理を行った場合に、単純な容量の積み上げをするものも少なくないという。
「極端な例でいうと、50GByteの領域を5世代バックアップした場合、250GByte分課金されてしまうケースもあると思います。弊社の場合は、たとえば50GByteの領域をバックアップする場合、GByteあたりの単価が700円だとすると、より長期の保管を希望される場合、課金対象となる50GByteは変えず、単価だけを750円にするなどしてオプション分だけ加算し、容量の単純な積み上げは行っていません。また、Windows、Linux、AIX、Sun Solaris、HP-UX、MAC OSなど多様なプラットフォームに対応しているのも他社には負けない特長です」と河部氏。