[イベントレポート]

ソーシャルは世界を変え、企業に変革をもたらす─経営陣は顧客や従業員の声にもっと耳を傾けよ

Dreamforce 2011

2011年9月29日(木)鳥越 武史(IT Leaders編集部)

ソーシャルツールを使いこなして顧客との関係強化を図る企業、すなわち「ソーシャルエンタープライズ」に、いかに変化していくか─。米セールスフォース・ドットコムが2011年8月30日〜9月2日にかけて米サンフランシスコで開催した年次イベント「Dreamforce 2011」の基調講演で、同社会長兼最高経営責任者(CEO)であるマーク・ベニオフ氏が、その必要性を会場に熱く訴えた(写真1)。

基調講演─“エンタープライズの春”が到来

マーク・ベニオフ会長兼最高経営責任者 写真1:基調講演で講演する米セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ会長兼最高経営責任者(CEO)

「FacebookやTwitterをはじめとするソーシャルツールの普及が世に大きな変化をもたらしている。人々に新たなつながりの機会を与えるといったレベルを超え、時に一国の体制をも覆すポテンシャルを持つことが実証された」─。基調講演の冒頭でベニオフ氏は、中東で立て続けに起こった「アラブの春」と呼ばれる民主化運動においてソーシャルツールが大きな役割を果たしたことを引き合いに出し、「今や『ソーシャル革命』が広がりつつある」と指摘した。

ソーシャルツールは当然のことながら、企業や経営者にも変革を促すと会場にまくし立てた。「間もなく『エンタープライズの春』とも言うべき事態が訪れる。アラブの春では独裁者が退陣に追い込まれた。同じ構図で経営者は、顧客や従業員に対して今まで以上に耳を傾けねばならない」(同)。

一般消費者のソーシャルツールに対するリテラシーが高まっていく一方で、企業サイドはその動きに追随できていないというのが、ベニオフ氏の見解。その実態を「ソーシャルデバイド」と表現し、対極にある「ソーシャルエンタープライズ」に変容する重要性を訴えかけた。具体的な取り組みを始める指針として挙げたのが次の3つのステップで、それぞれに支援サービスを用意していることをアピールした。

1. ソーシャルカスタマプロファイルの整備と活用

顧客を理解することが何よりも先決とし、ソーシャルツール上にある情報(人がどんな嗜好を持ち、どんなコメントを発し、誰とつながっているか)が非常に有用であることを強調。こうした情報を元に構築し得る顧客データベースを「ソーシャルカスタマプロファイル」と呼び、この整備が欠かせないという考えを示した。

このフェーズを支援するものとしてSFDCは、同社が2010年4月に買収した顧客名簿サービス「Jigsaw」のデータと、FacebookやLinkedInなど代表的なソーシャルツール上の公開情報を組み合わせたデータベースサービス「Data.com」を提供済み。これを使うと、例えばSalesforce CRMの顧客情報画面にソーシャルツール上におけるその人の発言や人脈を関連づけて表示できる。

2. 従業員ソーシャルネットワークの構築

その次のステップとして、従業員を対象としたソーシャルネットワークの構築を挙げた。「Twitterなど一般消費者が利用するソーシャルツールのスピード感に負けないリアルタイム性を、社内コミュニケーションに持ち込むもの」(ベニオフ氏)という位置付けだ。

これを受け、SFDCは企業内マイクロブログ「Salesforce Chatter」にいくつかの新機能を追加した。Chatterの会話画面に従業員からの申請内容を表示し、ボタンのクリックでただちに承認する「Chatter Approvals」、ユーザーのログイン状況を即座に確認できる「Chatter Now」などが代表例だ。対話だけでなく、ワークフローも含めてスピードアップを図ろうという狙いがある。

3. カスタマー/製品ソーシャルネットワークの構築

3つめのステップは、従業員にとどまらず、顧客や製品までを対象とする「カスタマ/製品ソーシャルネットワーク」の構築だ。他力本願ではなく、自社の主導の下にソーシャルを展開し、ビジネスに生かすことが欠かせなくなるとする。

SFDCはこれを踏まえ、Chatterの新機能として、Chatterのポータルに社内の従業員だけでなく、他社の人を招待可能にする機能「Chatter Customer Groups」を新たに提供する。これにより、社内外の枠を超えて協業を円滑にする。製品ソーシャルネットワークについて直接の言及はなかったが、トヨタ自動車と共同開発した、クルマが“人”として会話に参加する「トヨタフレンド」は、その1つと考えられる。

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