大半のユーザー企業にとって、取引のあるITベンダー=パートナーの方針や戦略は重要だ。ユーザー企業に提供される情報の鮮度や質、構築・運用するシステムのQCD、あるいはIT技術者の能力やモチベーションに影響するからである。しかしユーザー企業から見て納得感があり、頼もしい方針や戦略を提示しているITベンダーは、現実には少数派だろう。
「6年後の2017年に目指す姿は、“超メーカー”。商用ソフトとオープンソース・ソフトに自社のノウハウを組み合わせ、ソフトやハードのメーカーを超える価値を創造し、提供していく会社になる」--。ソフトウェア販売大手のアシストは1月11日、経営体制刷新に伴う記者説明会を開催。1月1日付けで社長に就任した大塚辰男氏は、今後6年間の中期経営計画の目標をこう掲げた。この言葉通りのことを実現できるなら、「要望されたことは何でも」型のITベンダーが多い中で、アシストは好ましい少数派に属するベンダーになるかも知れない。
例えばDBMS。アシストと言えばOracle DBであり、その普及に貢献してきた。「日本オラクルが設立される前から25年にわたって手がけてきた。その分、思い入れも強い」。だが一方で「PostgresDBや、MySQL互換のMariaDB、大規模向けの(カラム指向DBである)InfiniDBなど、OSSのDBMSを手がけていく。ユーザーのニーズは多様化し、OracleDBでは不十分なこともある」(大塚氏)。Oracleの代理店という立場から、顧客にマッチする製品や技術の提供者への転換を目指すわけだ。
ノウハウを蓄積し、得意分野を磨くために、手がけるソフト製品・技術も大きく3分野に絞り込む。上述のDB、WebFOCUSなどBI(ビジネス・インテリジェンス)やCMSの「ノレン」など情報活用製品、JP1を中心にした運用管理ソフトやLinuxなどのシステムソフトである。「(中期的に)ベンダー製品とOSSの売上に占める比率を、半々くらいにしたい。良く聞かれるが、SaaSやクラウドに関しては、クラウド事業者への支援は行うが、アシスト自身が手がけることはない。これが大方針」(同)。
今後、6年かけて、この方針を強化していく。「最初の3年は人材などの基盤作り。次の3年で顧客と利益を分かち合う日本で一番の会社にする。この6年間の中期計画を”弾丸-2017”と名付けた。文字通り、まっすぐぶれずに計画を達成するという意味だ」(同)。
アシストは未上場だが、5000社を超える顧客を持つソフト販売会社。40年前の創業以来、同社を率いてきたカリスマ社長であるビル・トッテン氏が,独立系のまま社員800人、協力会社を入れると1000人の会社に育て上げた。ビル・トッテン氏は記者説明会で「昨年、私は70歳になり、当社も昨年、40回目の決算を終えた。トップ交代のいい時期と判断した」と、円満かつ順当な経営体制刷新であることを強調した。