[インタビュー]

PureSystemsの「パターン」って何?─米IBMのチーフアーキテクトに聞く

2012年7月26日(木)IT Leaders編集部

IBMが新しい製品カテゴリとして「Expert Integrated System(EIS)」を世界同時に発表したのは2012年4月のこと。それに属するPureSystems製品群は、短期導入を具現化する汎用プラットフォームとして市場の関心も高い(解説記事はこちら)。ただし、ユーザー企業の手間を軽減するためにIBMが長年のノウハウを元に実装したという「パターン」の実態は、なかなかつかみにくい側面もある。関連製品のチーフアーキテクトを務めるジェイソン・マクジー(Jason McGee)氏に、具体的な話を聞いた。

IT Leaders:PureSystemsのコンセプトやアプローチが必要になった背景をまず整理してほしい。

McGee:かつて、例えば当社のAS/400などを企業システムの主軸として使っていた時代は、導入に伴う作業は比較的シンプルだった。ハードやミドルウェア、アプリケーションがシンプルに統合されていたからに他ならない。それがITの進展に伴ってユーザー企業は、多様なコンポーネント群の中から“ベスト・オブ・ブリード”の組み合わせで企業システムを構成するようになった。さらに、仮想化技術でインフラの柔軟性を高めようという取り組みも活発になった。


米IBM チーフアークテクトのJason McGee氏

選択肢が増えて自由度が高まった一方で、望み通りの環境に仕上げるまでの作業は複雑さを増した。必要なコンポーネントを選りすぐり、それらの依存関係や、日頃の運用におけるリソース最適化なども意識してパラメータを設定することが極めて煩雑なものになってしまったのだ。結果、導入までに多大な時間とコストがかかってしまう。これを以前のようにシンプルに対処しようとの目的で世に出したのがPureSystemsだ。

IT Leaders:IBMがこれまで培ってきたノウハウを凝縮した「パターン」があり、これを目的に応じてシステムに適用することで短期導入を可能にするという話だが、いまひとつ理解しにくい。

McGee:パターンというのはユーザーが実際に展開したいと考えているアプリケーション、または整備したいと考えているコンピューティング環境を、PureSystemsに教える役割を果たすと考えてほしい。例えば「○○を稼働させるアプリケーションサーバーを作りたい」といった要件をパターンで伝える。するとPureSystemsはそれを受けて、必要なリソースやソフトウェアのコンポーネントを選び、コンフィグレーションやパラメータ設定などの調整を自動化して、すぐに動かせる環境を提供する。

IT Leaders:「パターン」はつまるところ、想定用途別に用意するパラメータ群を一定フォーマットのテキストファイルとしてまとめたもの?

McGee:それはパターンを構成する1つの要素にすぎない。確かに、インプットとして用いるのは要件を記述したファイルだ。このファイルが駆動をかけることで、必要なコンポーネントや最適な管理形態を選び出すプロセスが内部的に走るようになっている。

とあるWebアプリケーションを動かすとなれば、そこで求められるデータベースやクラスター、キャッシュといった要素を洗い出し、最適な設定を自動的に施す。そこでは所定のポリシーに則ったセキュアな環境を用意しなければならないし、システムのライフサイクルを考えれば負荷に応じてリソースを増減させる設定もしなければならない。このような、さまざまな設定を自律的に調整する仕組み全体を指すのが「パターン」だ。

IT Leaders:他社も同様のアプローチを採れば、すぐに追随できるような気もするが。

McGee:導入作業をシンプルにしようという取り組みは、我々だけが唯一追求しているわけではないが、その中で最も進んでいるという自負がある。アプリケーションサーバーとかデータベースサーバーとかミドルウェアの分野でのソフトのパターン化が進む動きは確かにある。ただし、アプリケーションのレイヤーまでも視野に入れて力を注いでいるという点で、当社が抜け出していると考えている。

これを具現化できているのは、世界各国で様々なシステムを手がけてきた我々の経験値があるからに他ならない。システムを構成するハード/ソフトが、どんな状況でどんな動きをするかという膨大なデータがあるからこそ、最適解を導き出せる。他社は、そう簡単には追随できないだろう。

IT Leaders:PureSystemsのユーザーは、「パターン」に全面的に依存してもいいのだろうか。それとも、ある程度のチューニングはやはり必要?

McGee:ほとんどのユースケースにおいて我々のパターンで十分対処できると考えている。もちろん、だからといって何も微調整を加えられないというものではない。ニーズがあれば、好みのチューニングが施せる。

IT Leaders:PureSystemsに今後は続々とファミリー製品が増えてくるのだろうか。

McGee:現時点でのラインナップは、PureFlex SystemとPureApplication Systemの2製品。これに、特定のワークロードに特化した製品を追加する構想はあるが、いずれにせよ“大家族”にはならないだろう。

IT Leaders:EISというカテゴリーにおいて実現しようとする理想像を100%だとすると、現状の達成度はどの位か?

McGee:何事においても、ひとっ飛びにすべてを実現するのは難しいことだ。我々にしても、構想のコアとなる部分を具現化する第一弾をやっとリリースできたに過ぎない。個人的な感覚ではまだ60%ぐらいだろうか。まだまだやるべきことはあり、今後のエンハンスに期待していてほしい。

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