[市場動向]

大手ベンダーがOracle Exadataの後を追う理由─“垂直統合マシン”の真実

先鞭付けたオラクルにIBMが対抗軸

2013年2月6日(水)IT Leaders編集部

最適な組み合わせでハード/ソフトを一体化した「垂直統合マシン」が続々と市場に登場している。どんな動きがあり、どんな背景があるのか。まずは、全体像を俯瞰しておこう。

オラクルが“データベースマシン”として初代「Exadata」を世に送ったのは2008年9月のこと。その後、プライベートクラウド基盤の「Exalogic」、データ分析基盤の「ExaLytics」を追加し、ハード/ソフトを最適化した状態で提供する製品─同社の言葉を借りれば“エンジニアドシステム”─のバリエーションを広げてきた。「したたかな囲い込み戦略では」との声はさておき、垂直統合マシンの登場が、企業のIT基盤のあり方を再考するための一石を投じたのは事実だろう。

メガベンダーの新たな主戦場に

「ITの常識と経済性を根底から変える」─。そんなメッセージと共に同じ土俵に上がったのがIBMだ。2012年4月、同社のハードとソフトを統合して提供する新しいカテゴリ「Expert Integrated Systems」を世界同時に発表。具体的な製品として「PureFlex System」と「PureApplication System」を市場投入した。同年10月にはデータ処理に特化した「PureData System」を追加してラインナップを拡充している。

“ビッグ2”の動きに目が向きがちだが、動きは他にもある。ヒューレット・パッカード(HP)の「CloudSystem Matrix」や、シスコシステムズ、EMC、ヴイエムウェアの3社が展開する「Vblock Infrastructure Package」なども派手な動きこそないが垂直統合マシンの一角に位置付けられる。

ここにきて国産勢も動き始めた。先陣を切ったのが2012年10月に「Unified Compute Platform(UCP)」を発表した日立製作所。IaaS基盤モデル「UCP Pro for VMware vSphere」とPaaS基盤モデル「UCP with OpenMiddleware」の出荷を12月から開始する。

続く12月には富士通が名乗りを上げた。第1弾としてリリースしたのがデータベースシステム「 Integrated System HA Database Ready」。さらにデータウェアハウスやビジネスインテリジェンスに照準を合わせたファミリー製品を投入する計画もある。

NECも着々と準備を進める。現在、「Project SIGMA」の名の下に統合プラットフォームの実装を進めており、2013年春をメドに発表する予定だ。

シンプルな“1社完結”への期待

統合プラットフォームに注目すべき背景には何があるのだろうか。

ガートナー ジャパンの亦賀忠明氏は「“即効性のあるIT”を経営陣が厳しく求めるようになったこと」を1つの理由に挙げる。企業競争が厳しくなり、ただならぬスピード感をもって製品/サービスを提供していくことが勝ち残るカギ。それを支えるのがITの役割であり、もはや、そこに余計な手間やコストを掛けられなくなったという事情がある。「IT予算の約7割が既存システムの運用管理に費やされるという話が指摘されるのは周知の通りで、そのコスト構造から脱却することが喫緊の課題。ブレークスルーとしての期待が垂直統合マシンに注がれている」(亦賀氏)。

そこには、「“ベストオブブリード”に疲弊した反動」(アイ・ティ・アールの生熊清司氏)との見方もある。企業ITの分野でオープン化が声高に叫ばれていた時、製品選択の自由度、つまり“各社のいいとこ取り”ができることが大きなメリットに映った。競争原理が働いて価格もこなれたものに落ち着くという期待感もあった。「そうした恩恵も確かにあったはずだが、システムの構築から運用まで一連のライフサイクルを回すのはことのほか大変という現実が重くのしかかった」(同)。

その組み合わせで動くのかという検証、期待性能を発揮させるためのチューニング、障害時の原因究明、個別バージョンアップの影響範囲特定、買収などに伴う製品戦略の予期せぬ変更…。どれをとっても負担は少なくない。ビジネス価値への直接貢献が厳しく求められる中、垂直統合マシンに解決の糸口を見つけようという思いはうなずける。

自社運営するオンラインゲーム「ドラゴンクエストX」のIT基盤にオラクルの「Exadata」を導入したのがスクウェア・エニックスだ。「オンラインゲームという性格上、システムは寸分たりとも停止できない。公表はできないがトランザクションもかなりの量に上る。その前提に立つと最優先すべきは万一の障害時への備えであり、“1社完結”の基盤は魅力的に映った」(執行役員 情報システム担当の西角浩一氏)と話す。

垂直統合マシンを多くのユーザーが使えば、他所での知見やノウハウが速やかに還元されることも期待できる。うまくエコシステムが機能した時、“運用7割”のコスト構造は抜本から変わる可能性を秘めている。

まずは製品への理解を深める

垂直統合マシンは歴史がまだ浅く、自律化や自動化に向けて進歩の余地を残している。パブリックを含むクラウドとの密なる連携も図られてくるはずだ。だが、ビジネススピードがものをいう今、この分野の成熟を待つという悠長な構えは許されない。垂直統合マシンに込めらた設計思想や具体的な実装技術への理解を今のうちから深め、自社IT基盤のグランドデザインの中に、いつでも取り込める準備を進めていくことが肝要となる。

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
関連キーワード

Oracle / Exadata / IBM / Gartner / ITインフラ

関連記事

トピックス

[Sponsored]

大手ベンダーがOracle Exadataの後を追う理由─“垂直統合マシン”の真実最適な組み合わせでハード/ソフトを一体化した「垂直統合マシン」が続々と市場に登場している。どんな動きがあり、どんな背景があるのか。まずは、全体像を俯瞰しておこう。

PAGE TOP