米Cisco Systemsの2人のバイスプレジデントが執筆した著作、「Collaboration Imperative:Executive Strategies for Unlocking Your Organization’s True Potential」の日本語訳がこのほど出版された。来日した2人の著者にインタビューした。
まず社内で共通の語彙、言葉を定義する
──うーむ。ところでお二人はシスコにおける実践経験に基づいて本を書いたとのことだが、そもそもシスコはどんな問題意識でコラボレーションに取り組んだのか。
ウィージ:タイムトゥーマーケットの期間を短縮するためだ。顧客や取引先は、我々がより俊敏に動くことを求めている。同時に部門のサイロ化を解消する意図もあった。従来、当社では複数の異なる部門が類似の製品を販売し、顧客を取り合っていた。貴重なリソースを社内競争に費やしていたのだ。CEOであるジョン・チェンバースは、この状況を問題視していた。
──解決のために、まず自社の製品やサービスを使おうとしなかった?
リッチ:もちろん使った。特に時間を短縮するにはテクノロジは不可欠な要素だ。しかし、それだけでは投資対効果は限定的になってしまう。例えばテレプレゼンスを導入したことにより1年間の出張経費を2億ドル、オフィス賃料を6000万ドル削減した。
──それはそれで相当な効果だと思う。
リッチ:でも考えてみると、効果を得られるのは最初の1年だけ。重要なのは、その翌年からも価値を創出し続けることだ。それには、テクノロジにより可能になった新しい働き方から最大の価値を引き出すようにプロセス自体を変える、つまり社内カルチャーを変革させなければならない。
──しかし企業にとって、長年培ってきたカルチャーを変えることはそう簡単ではない。どうやったのか。具体的な方法論を聞きたい。
リッチ:まず大事なのは目指すゴールを全社でシェアすること、共通の目標を持つことだった。
──よく言われることだが、実践するのは難しい。
リッチ:確かにその通りだ。そこで第一歩となるのが、語彙を同じにすることだった。米国でも、日本でも、インドでも、だ。象徴的な出来事を1つ挙げよう。プロジェクト開始前、25人のシニアエグゼクティブに、“成功”の意味を尋ねた。するとなんと、25通りの答えが返ってきた。
──経営層の間ですら、成功の定義が異なっていた?
リッチ:そういうことだ。そこで意思決定とそれに基づくゴールからあいまいさを排除し、誰もが理解できるような表現を作った。「Vision(ビジョン)」「Strategy(戦略)」「Execution(実行)」「Metrics(測定基準)」という4つの共通の言葉を用いることにしたのだ。頭文字をとって「VSEM」と呼んでいる。
ウィージ:Visionとは自社が5年以上にわたって顧客や他の組織に提示していく価値のこと。Strategyは2~4年継続して他社との差異化を図るための方法だ。Strategyを実現するための12~18カ月以内の活動計画がExecution。最後のMetricsはExecutionにより得られた成果を評価する方法を指す。